クマ出没増加への対応策が発表
観光地でのクマ出没が続く中、施設の安全確保が困難となる事例が相次いでいる。こうした状況を踏まえ、東京海上日動火災保険が観光事業者専用のクマ侵入補償制度を開始することを公表した。クマの侵入で営業を継続できなくなった場合の経済的損失に備える枠組みで、販売は12月から行われる予定となっている。これまで施設向けに特化した仕組みは存在しておらず、業界初の試みとして位置づけられる。
営業不能時の利益補償内容が判明
今回の制度では、施設が閉鎖を余儀なくされ、受け付けていた予約を取り消した際の利益相当額を補償する。宿泊施設やゴルフ場、キャンプ場など、人の往来が多い業態では損失が大きくなりやすいため、導入の意義は大きい。侵入した個体がヒグマかツキノワグマかを問わず、映像によって敷地侵入が確認されていることが条件とされる。営業状況を公式サイトなどで公表することも適用の前提となっている。
設備投資や安全準備への支援が示された状況
再発を防ぐために必要な電気柵の設置費用や補修費用も補償対象に含まれる。クマスプレーの購入など、従業員が安全に勤務できる環境を整えるための支出にも対応し、施設が速やかに通常業務へ戻るための環境整備を支援する。これらの対策は観光シーズンの繁忙期と重なることも多く、事業者にとって財務負担が大きいことから、保険の導入が現場の要望として強まっていた。
最大補償額と保険料水準の概要が明らかに
補償額の上限は1,000万円とされ、事業者の所在地や規模に応じて保険料が決まる。年間保険料は10万〜50万円程度が想定され、地域の出没頻度なども考慮して設定される見込みである。制度設計では、地域差の大きいリスクを反映するため、柔軟な保険料体系が採用されている。観光需要が地域経済を支える自治体では、事業継続を支援する手段として注目が集まりつつある。
観光業界に広がる対策強化の動きが浮上
今回の補償制度は、野生動物による事業中断リスクを可視化し、事業者が事前に備えるための基盤を整えるものとなる。クマの侵入により営業が途絶える事例は地域の供給体制にも影響を与えることから、制度の浸透は観光地全体の運営を安定させる効果が期待される。自然環境と観光の両立が課題となる中、リスク管理を強化する動きが今後も拡大していくとみられる。