経済対策原案が示す財政出動の方向性が判明
政府は2025年11月13日、総合経済対策の原案を与党に提示し、物価高の進行を受けた家計支援策を中心に据えた内容を明らかにした。原案では自治体が自由に活用できる重点支援地方交付金の拡充が盛り込まれ、商品券の発行や生活費負担の軽減が可能となる仕組みを強調した。特に「おこめ券」やプレミアム商品券の活用を後押しする方針が示され、地域単位での即効性のある支援が期待されている。これらの施策は物価上昇が続く中で家計を守るための柱と位置づけられ、与党内でも早期の実施を求める意見が出ている。
中小企業支援と医療介護の処遇改善策が発表
原案には賃金引き上げに取り組む中小企業への支援が含まれ、交付金を賃上げ原資として活用できる仕組みが整えられた。また、冬季の負担増が懸念される電気・ガス料金への支援策も盛り込まれ、生活基盤の安定を重視した対応が示された。医療・介護分野では従事者の待遇改善を進めるため「医療・介護等支援パッケージ」を設け、報酬改定の効果を前倒しして処遇改善を急ぐ方針が示された。経営難が進む民間病院に対しては資本性劣後ローンを提供し、財務基盤の立て直しを支援する仕組みが盛り込まれている。
戦略分野投資が成長力強化に与える影響
高市政権が重視する危機管理投資・成長投資の分野では、量子技術や生成AI、重要鉱物など安全保障に直結する領域で供給網を強化するための新たな財源確保策を検討している。さらに、造船業の競争力低下に対応するため、生産基盤の強化と研究開発の支援として総額1兆円規模の投資を目指す方針が示された。宇宙関連産業にも同規模の支援を行う内容が明記され、官民連携による産業基盤の強化が打ち出された。これらの施策は国内産業の立て直しと長期的な成長力の確保に向けた位置付けとなっている。
補正予算拡大を求める声が政権運営に及ぼす影響
補正予算案の規模を巡っては、12日の経済財政諮問会議で民間議員が前年度の13.9兆円を上回る必要性を指摘し、積極財政を望む声が強まっている。13日に開かれた自民党の会合でも、歳出規模の更なる積み増しを求める意見が相次ぎ、「20兆円規模を目指すべきだ」との声も上がった。小林鷹之政調会長は財務当局との認識の差を示しながら、規模拡大の必要性を強調している。こうした状況を踏まえ、補正予算案の歳出規模は前年度を超える見通しが強まり、財政運営の方向性が注目されている。
国債増発による財源確保の方針が示す課題
財源については、片山さつき財務相が「不足すれば国債を増発する」と述べ、国債による財源確保を容認する姿勢を示した。財政出動の拡大を進める上で国債発行に依存する構造が再び意識される状況となり、財政健全化との両立が課題として浮上している。物価高対策や戦略投資など多岐にわたる施策を盛り込む中で、財源確保の手法が今後の政策運営に影響を与える可能性があり、政府内外で議論が続く見通しである。