東京23区の短期売買率が示す市場の実態把握強化の動き

嶋田 拓磨
经过
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都心で短期売買が増えた実態が判明

東京都内の新築マンション市場における短期間での転売動向について、国土交通省がまとめた初の調査結果が明らかになった。2024年1〜6月に取得された東京23区の新築物件では、購入から1年以内に所有者が変わった割合が9.3%に達した。調査は登記情報を基礎に分析され、短期での転売行為がどの程度発生しているかを把握する目的で実施された。こうした動きは特定の地域で顕著となり、都心部に集中していることが浮き彫りになった。

都心6区で12.2%と高い比率が判明

千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷の都心6区に絞ってみると、短期売買は12.2%に達した。これらの地域は高額物件の供給が多く、投資需要が比較的強いとされる。東京都全体では8.5%であったことから、特定エリアに短期間での転売が集中している構図が見て取れる。国土交通省はこれらの数字を精査し、どの属性の購入者が短期売買に関わっているのか分析を進めている。

海外居住者による取得割合も調査で判明

調査では国内外住所別の取得者の比率も確認された。2025年1〜6月に東京23区で新築マンションを取得した人のうち、海外に住所を持つ割合は3.5%となった。国籍は登記情報から判別できないため住所が基準となっている。この比率は一定の存在感を示しつつも、市場全体を左右する水準ではないといえるが、海外資金による取引の有無を把握するうえで重要な指標とされる。

政府が投機的取引の抑制策を発表

高市早苗首相は関係閣僚会議で、国内外の取得を含む実態把握の徹底を国土交通相に指示した。マンション価格の上昇が続くなか、短期売買が価格形成に影響しているとの指摘を受け、政府は民間団体と連携して投機的な取引を抑制する体制の整備を進めている。調査結果の公表は市場の透明性を高め、過度な売買を抑える効果が期待されている。

価格上昇が取引動向に与える影響

不動産経済研究所によると、2025年10月の23区の新築マンション平均価格は前年同月比18.3%増の1億5313万円となった。価格が上昇する環境が続いており、投資的な動きが一部の地域で増えている現状と合わせて、需要の偏りが市場に与える影響が注視されている。今回の調査結果は価格動向と短期売買の関連を検証する基礎資料となり、今後の政策立案に反映される見通しだ。

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