海外取得拡大で浮上した新築市場の地域別動向分析

市原 陽葵
经过
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首都圏で進む取得増加が示す市場の変化

国土交通省が11月25日に公表した初の調査結果によると、東京23区で2025年1〜6月に新築マンションを取得した海外居住者の割合は3.5%となり、前年の1.6%から上昇した。千代田、港、新宿などの都心6区では7.5%に達し、中心部への需要集中が際立った。海外居住者による取得は価格高騰の主因ではないとされるが、市場構造の把握において重要なデータとなった。調査は不動産登記に基づき、住所が国外の取得者を抽出して算出された。

区ごとに異なる購入動向が示した偏在構造

東京23区内の動きは一様ではなく、区により大きく異なっていた。新宿区は前年1.7%から今年14.6%へと急伸した一方、中央区は2.2%から0%に低下した。供給された物件の価格帯や立地条件によって購入傾向が変わるため、取得割合は年度ごとに大きく振れる点が特徴である。また、東京圏全体では1.9%にとどまり、都心部での需要の集中を際立たせた。京都市2.5%、福岡市1.9%など、全国的にも都市規模や供給状況によって結果が変化する様子がうかがえる。

近畿圏で確認された取得増加が示す特徴

関西では大阪府が2.6%、京都府が2.3%となり、特に大阪市では4.3%と府全体を大きく上回った。京都市も2.5%を示し、首都圏と同様に都市中心部へ取得が偏る構造が現れた。ただし大阪市は2024年に5.1%を記録しており、25年の数値が必ずしも強い上昇基調を示すわけではない。国交省担当者は地域差の理由を分析対象外としているが、利便性の高い物件への需要が反映されている可能性がある。

転売データが示した短期取引の影響

取得割合とは別に注目されたのが、1年以内の売買状況である。大阪市では7.2%、神戸市では12.1%の新築物件が短期間で再売買されており、投機的な動きが一定の割合で存在していることが浮き彫りとなった。海外居住者が国内に法人を設立し、その法人名義で取得する場合は統計上「国内居住者」と扱われるため、実態は調査結果以上に高い可能性も指摘される。また、中古物件の購入も含めると、価格形成全体への影響はさらに広がるという見方もある。

新制度検討を巡る今後の調査拡充方針を発表

金子恭之国交相は会見で、海外居住者の取得が目立ち始めているとして、継続的に状況を追跡する姿勢を示した。現行の登記制度では国籍情報が取得できないため、法務省が制度を整備する場合にはより詳細な分析が可能となると述べた。今回のデータは価格高騰の主要因ではないと判断されているものの、都市部での需要集中を把握するうえで重要な基礎資料となる。今後は市場変動を評価しながら、調査精度の向上と実態解明が求められることになる。

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