「規制から活用へ」日本の暗号資産政策が転換点に

河本 尚真
经过
読了目安: 8 分

Web3分野の産業政策としての明確化進む

日本政府は、暗号資産とWeb3技術を「戦略産業」として捉え直す方向へ政策を転換し始めた。金融庁が公表した制度見直しの資料には、従来の管理型アプローチを超えて、資本市場との統合的な発展を目指す意図が見え隠れしている。新たなワーキンググループの設置と金融審議会での議論開始は、その第一歩といえる。

Web3が描く「地域から世界」への価値創造構想

分散型技術の導入により、地方の経済活動や文化的価値が国際市場と接続される道が開かれつつある。政府はNFTなどのデジタル資産を活用し、物理的な距離に縛られない新たな価値流通モデルの構築を目指している。観光・芸術・地域産品のブランディングと流通が新たな形で再定義されることになれば、これまで取り残されてきた地域にも持続的な経済成長の機会が訪れる可能性がある。

ETFと課税見直しが投資環境に与える影響

金融商品取引法への移行が実現すれば、税制が緩和され、分離課税(約20%)が適用されることになる。これは個人投資家の投資意欲を喚起し、国内資産の循環を促す大きな転換となる。さらに、国内初の暗号資産ETF解禁も視野に入ることで、年金基金や証券会社などの大型資金の参入も期待される。取引所を通じた透明な価格形成と流動性の向上は、市場の信頼性を一段と高めることになる。

暗号資産を「金融商品」と定義する意義

制度上の位置づけを「通貨的資産」から「金融商品」へと移行することで、暗号資産が法制度上も明確に投資対象として確立されることになる。これは単なる技術革新ではなく、金融構造そのものに関わる基盤整備を意味する。証券取引に適用される投資家保護、情報開示、取引ルールなどが適用されることで、市場に対する信頼も段階的に向上することが見込まれている。

国際的競争力と投資家流出防止が背景

この政策転換の背景には、暗号資産市場を巡る国際的な競争環境の激化がある。とくに米国をはじめとする主要国が明確なガイドラインと上場商品を整備するなかで、日本は相対的に「投資環境の不透明さ」が指摘されてきた。投資家の国外流出を防ぎ、国内に資金を呼び戻すには、予測可能かつ安定した規制の構築が不可欠だ。今回の議論は、その起点となる可能性がある。

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