フジHD、総会で信任得るも改革の正念場

小野寺 佳乃
読了目安: 8 分

経営刷新を前面に押し出した清水社長

6月25日に行われたフジ・メディア・ホールディングスの定時株主総会では、全議案が承認され、経営陣による再建策が一歩を踏み出した。注目された清水賢治社長の就任についても了承され、会見で清水氏は「刷新された体制が信任された」と語り、ほっとした様子を見せた。

米国のアクティビスト投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が独自に提出した人事案は否決された。これにより、同社は5月に発表した経営再建策を推進する立場を得た。

一部株主からは理解と期待の声

会場では、株主の一部から経営陣への一定の理解が示された。豊島区在住の女性株主は「清水社長の説明が聞けて納得できた」と述べ、改革姿勢を評価した様子を見せた。

一方で、50代の男性株主は「改革の成果を見極めてから判断したい」と慎重な姿勢を崩さず、株価の推移を注視すると話した。こうした声からは、一定の信任とともに経営の結果責任への厳しい目線も感じられる。

不祥事と視聴者離れが重い課題に

FMHはここ数年、信頼回復に向けた課題を抱えてきた。元タレントによる性加害報道の対応や、社員がオンラインカジノで違法賭博を行い逮捕される事件など、企業統治の機能不全が顕在化している。これらの問題は視聴者の信頼やスポンサーからの評価に直接影響し、広告出稿にも打撃を与えている。

FMHは10月の番組改編に合わせ、有力スポンサーの出稿を正常化させたい考えだが、ガバナンス体制の見直しなくして広告市場の信頼回復は困難とみられる。

投資ファンド側はさらなる圧力を示唆

ダルトン・インベストメンツは株主総会後に談話を発表し、「今回の結果は改革の第一歩に過ぎない」とし、引き続き不動産部門の分離などを求めていく姿勢を鮮明にした。さらに、臨時株主総会を通じて再び取締役選任案を提出する可能性を示唆しており、対立構図は解消されていない。

旧村上ファンド系列の投資家も一定の株式を保有しているとされ、今後の株主動向には不確定要素が残る。

今後の経営再建に求められる透明性と実行力

経営陣にとって、株主総会の承認は「信任」であると同時に「責任」の始まりでもある。社内の規律強化、視聴者とスポンサーへの信頼回復、そして収益構造の改善という三重の課題に対し、具体的な成果が求められる局面に入った。

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