雇用減少で利下げ観測強まる
米ADPが2日に公表した6月の民間雇用データによると、就業者数は3万3,000人の減少となり、2023年3月以来のマイナスを記録した。事前予想の9万5,000人増とは大きく乖離しており、これを受けてFRBによる9月の利下げ観測が市場で広がっている。翌3日に予定される政府の雇用統計が重要な材料となる見通しだ。
金利と為替、市場は財政リスクにも反応
債券市場では、FRBの利下げ観測よりもトランプ政権の減税・歳出法案による財政赤字拡大への懸念が意識された。10年国債利回りは4.291%、30年債は4.821%といずれも小幅に上昇。一方、ドルは雇用統計を前にしたポジション調整もあり、主要通貨に対して堅調に推移。ポンドは英国債売りを背景に下落した。
株式市場はナスダック中心に最高値更新
株式市場では、ナスダックとS&P500が反発し、それぞれ過去最高値を更新。エヌビディアやアップルなどハイテク株が買われ、トランプ政権によるベトナムとの関税交渉合意も、貿易リスクの後退として好感された。ダウ平均は小幅安となったが、最高値からの下落率は1.18%以内にとどまった。
金と原油、地政学的要因も支援材料に
ニューヨークの金市場では3日続けて買いが優勢となった。早期利下げ観測を強めるADP統計と、今後の雇用統計を控えた持ち高整理の影響が大きい。原油相場も上昇し、イランがIAEAとの協力を停止すると発表したことで中東情勢への警戒感が強まり、加えてベトナムとの経済協議の進展も相場の支援材料となった。
財政政策と利下げ、複雑な市場環境に
トランプ政権が進める大規模な減税と歳出法案は、共和党内の一部議員からも反対意見が出ており、下院での採決が焦点。債券市場ではインフレ再燃への警戒感が根強く、投資家心理は揺れている。FRBの政策判断に加え、政権の財政運営方針も市場の行方を左右する要因となっている。