改正案協議の動きが示す政策方向
政府・与党は2026年度税制改正の取りまとめに向け、資産形成支援と所得再分配の双方を組み込んだ修正案を最終調整している。焦点の一つであるNISAの拡大では、18歳未満を新たに対象とし、若年層の投資環境を整備する方針が固まった。制度設計は成年と同様に長期運用を基本としており、非課税枠の設定は負担の偏りを避ける仕組みとして位置づけられている。自民党と維新の会は国会内で案の整合性を確認し、調整作業を進めた。協議後の説明によれば、主要部分は合意されており、残された項目の処理が次週の決定に向けた課題となっている。
未成年向け制度の特徴が示す新たな運用像
今回の改定では、つみたて投資枠に限定して18歳未満の利用を認め、年間60万円の投資上限と600万円の非課税保有枠を設ける。旧ジュニアNISAが引き出し制限の重さから利用低迷につながった経緯を踏まえ、12歳以降は子供本人の同意を条件に引き出しを可能とする方向が示された。資金提供者の所得状況による格差を抑制する目的で総額上限を設定し、制度全体の公平性を意識した形となっている。未成年の早期投資を促す一方、無制限の資金移転による不均衡を避けるため、従来よりも精緻なバランス調整が施された点が特徴といえる。
高所得者層への税負担強化が示す再分配構造
課税体系の見直しとして、超富裕層に対する追加負担の発生基準を約30億円から約6億円へ下げる案が提示されている。現行制度では給与所得に対する累進課税の最高税率が55%であるのに対し、株式売却などの金融所得は20%の固定税率にとどまるため、所得構造の違いによる負担の偏りが問題視されてきた。「1億円の壁」と呼ばれてきた所得帯で税負担率が下がる現象の修正を目的とし、所得構成が大きく異なる層に対し一律の補正を適用する方向が示された。制度が成立すれば、金融所得の比率が高い層に一定の影響が及ぶことになる。
設備投資促進措置の新設が示す産業政策
企業の国内投資を後押しするため、一定規模の設備投資を対象とした減税制度を創設する方針も含まれている。大企業は35億円以上、中小企業は5億円以上の投資を条件とし、利益率が15%を超える計画に限り適用される。対象企業は投資額の7%を法人税額から控除するか、全額を初年度に償却する即時償却を選択できる仕組みだ。成長分野への集中投資を促すことで生産性向上を図る狙いがあり、国内設備の強化を通じた経済基盤拡大を後押しする施策として位置付けられている。
協議が続く論点が残す制度設計の課題
高校生年代への扶養控除縮小や防衛費の財源確保に向けた所得税増税の扱いを巡り、与党内の意見調整は続いている。児童手当の対象を高校生まで広げたことから扶養控除の見直しが議題となったが、維新は慎重姿勢を示し、合意形成には至っていない。さらに、所得税の非課税基準である「年収178万円」の扱いを巡り、国民民主党は一律引き上げを求めており、与党との協議が焦点となる。大綱決定へ向けた詰めの協議が続く中、税制全体の整合性を保つ調整が問われている。