AI覇権競争で後退 マイクロソフトの誤算

嶋田 拓磨
经过
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半導体量産延期が戦略全体に波及

米マイクロソフトが進めてきたAI向けカスタムチップ「Maia」の量産時期が2026年以降にずれ込むことが分かった。当初の計画では2025年の実用化を目指していたが、複数の技術的・人的障壁が進捗を阻んだ。この延期は、同社が掲げていたAIインフラの内製化戦略全体に影響を及ぼす可能性がある。

内部構造の複雑さと設計再調整が明るみに

関係者によれば、開発中のMaiaチップでは設計上の想定と現実との間に乖離が生じ、再設計を余儀なくされた。これに加え、開発チームの高い離職率が継続的な作業の妨げとなった。最先端技術を扱う開発現場では、こうした不確定要素が量産時期に直結する。

エヌビディア依存からの脱却にブレーキ

マイクロソフトはエヌビディアの高額なGPUに代わる独自チップの開発により、サーバーコストの削減と供給安定化を目指してきた。しかし、今回の遅延により、同社は当面の間エヌビディアへの依存を続けることになる。コストや供給網の見直しが求められる局面に入っている。

他社の前進とマイクロソフトの出遅れ

アマゾンは「Inferentia」や「Trainium」といった自社製チップをすでに展開しており、グーグルも「TPU」シリーズを実用化している。一方、マイクロソフトは2023年11月にMaiaの構想を発表して以降、競合に比べて量産段階への移行が遅れており、市場での位置づけにも差が出てきている。

技術優位性確保のための巻き返しが焦点に

AIとクラウドの融合が進むなか、基盤となるハードウェアの競争力は企業の優位性に直結する。マイクロソフトが巻き返しを図るには、設計と開発の両面での強化が急務だ。今回の延期を単なる失速で終わらせないためにも、体制の再構築が鍵となる。

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