インテル7四半期ぶり黒字転換 AI需要とコスト削減が寄与

嶋田 拓磨
经过
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パソコン向け回復とコスト削減で収益改善が進展

米半導体大手インテルが発表した2025年7〜9月期決算では、最終損益が40億6300万ドル(約6200億円)の黒字となり、7四半期ぶりの黒字転換を果たした。前年同期は166億3900万ドルの赤字であり、大幅な改善を示した。
黒字化の背景には、主力であるパソコン向け半導体需要の回復と、経営再建策として進めてきた大規模なコスト削減がある。特にAI対応パソコン市場の拡大が、業績回復のけん引役となった。

パソコン部門が堅調推移 データセンターは減速

インテルのクライアント・コンピューティング部門の売上高は前年同期比5%増の85億ドルとなり、AI機能を搭載した新型パソコンの需要が追い風となった。一方で、データセンターおよびAI関連部門は1%減の41億ドルにとどまり、生成AI競争の激化が影響した。
全体の売上高は136億5300万ドル(約2兆800億円)で、前年同期比3%増。市場予想を上回る結果となった。

ファウンドリー事業も改善 投資削減が奏功

課題とされてきた半導体受託生産(ファウンドリー)事業では、売上高が前年同期比2%減の42億3500万ドルだったが、営業赤字は23億2100万ドルまで縮小。前年の57億9900万ドルの赤字から大きく改善した。これは工場投資を抑制し、効率化を進めた成果とみられる。
経営陣は採算性の低い事業や投資の見直しを進め、ドイツとポーランドの新工場計画を中止。2025年末までに従業員数を7万5000人に削減する計画を掲げている。

政府と大手企業の出資が再建を後押し

インテルの経営再建を支えるのは、米政府・エヌビディア・ソフトバンクグループによる出資である。第3四半期にはCHIPS法に基づく57億ドルの支援を受領。さらに米政府は総額89億ドルを出資し、同社株の9.9%を保有する筆頭株主となった。
AI分野で競合してきたエヌビディアも50億ドルを出資し、共同開発を進める予定だ。ソフトバンクグループも20億ドルの投資を表明しており、強固な資金基盤が形成されつつある。

市場は再建評価も慎重姿勢 業界競争は続く

インテル株は発表後の時間外取引で約7%上昇。東京市場では関連株が全面高となり、日経平均は4万9299円まで反発した。
ただし、同社が示した10〜12月期の売上見通し(128〜138億ドル)は市場予想をやや下回り、完全な回復には時間がかかるとの見方もある。アナリストの間では、先端半導体で優位を保つエヌビディアやAMDとの競争が続く中、「再建完了には2年を要する」との分析も出ている。
それでも、今回の黒字転換はタンCEOが推進する経営改革が実を結び始めたことを示す重要な節目となった。

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