AIの進化がもたらす影と光、ディープシーク研究員の警鐘

小野寺 佳乃
読了目安: 6 分

人工知能の急成長が社会に与える新たな課題

中国AI企業ディープシーク(DeepSeek)の上級研究員陳徳里氏が、浙江省烏鎮で開かれた世界インターネット会議で、AIの進化がもたらす負の影響について言及した。短期的には生産性の向上や効率化をもたらすが、長期的には社会に深刻な変化をもたらす可能性があると述べた。

「AIが職を奪う時代」に現実味

陳氏は、今後5〜10年で一部の職業がAIに置き換えられ、10〜20年後には人間の働き方そのものが変わると警告した。単純労働だけでなく、創造性や判断を要する分野でもAIが人間に迫る勢いを見せており、社会全体の雇用構造に大きな影響を及ぼすと指摘した。

成功企業が示した「自己警戒」

ディープシークは、2025年初頭に低コストで高性能なAIモデルを発表して以来、中国国内外で高い評価を得ている。しかし、その成功にもかかわらず、同社がAIの危険性を公式に認めたのは今回が初めてだ。陳氏は「テクノロジー企業は社会の守備役を果たす責務がある」と述べ、開発者自身がリスクを直視すべきだと訴えた。

AIと倫理、そして中国の独自路線

ディープシークのAIモデルはCambriconやHuawei製の中国チップと互換性を持ち、国外依存を減らす一方で、倫理面での国際的な議論を呼んでいる。AIの自立的発展を目指す中国にとって、技術と倫理の両立は今後の課題となる。

雇用不安から社会的議論へ

AIが雇用市場に与える影響は中国国内にとどまらず、世界的な議題となりつつある。専門家の間では、教育制度の再構築や再就職支援策が急務だとの指摘も上がっている。ディープシークの発言は、AI産業の未来に対する警鐘として広く注目を集めている。

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