節目の年に最新技術を披露、500人が参加
創立110周年を迎えた武田薬品工業大阪工場が11日、記念イベントを開催した。現地とオンラインを合わせて約500人の従業員が参加し、製造現場の最新技術を紹介。無菌室でのAI解析や3Dプリンター活用など、次世代型生産体制の取り組みが公開された。山田章弘工場長は開会の挨拶で「過去と現在をつなぐ努力の積み重ねが、今の大阪工場を支えている」と述べた。
AIが作業速度を監視、衛生維持を可視化
医薬品の注射剤を製造する無菌室では、AIが作業員の歩行速度を自動で解析し、適正速度を色分け表示する仕組みを導入。微粒子の舞い上がりを防ぐための基準を数値化し、衛生維持の精度を高めている。従業員は自身の動作をリアルタイムで確認でき、日常業務における意識改革にもつながっている。
自社製造の備品でコスト1,000万円削減
展示会場では3Dプリンターで製作した備品も紹介された。試験管ラックなどの実物が披露され、現場のニーズに合わせた設計により使い勝手を改善。担当者は「2年半の運用で約1,000万円のコスト削減を実現した」と説明した。今後はさらなるプリンターの導入を検討しており、現場改善のスピードアップを図る。
1915年創設の老舗工場、次の100年へ
大阪工場は1915年に設立され、武田薬品初の国内製造拠点として稼働を開始。初期にはアスピリンを生産し、現在は注射剤に特化している。同社は2023年度に血液製剤の新設備投資を決定しており、医薬品供給体制の強化を進めている。老舗工場としての伝統と最先端技術の融合が進行中だ。
デジタル変革が製薬業界に波及
武田薬品はAI解析、VR訓練、ドローン点検などを順次導入し、国内外の拠点にも展開する計画を進める。生産性と安全性を両立させた新しい管理手法は、製薬業界全体のモデルケースとして注目されている。同社は今後も人材育成と技術革新の両輪で、国際競争力の強化を図る方針を示している。