投資拡大の背景を示す動き
三井住友フィナンシャルグループが、2026年度から3年間にわたって1兆円規模のIT投資に踏み切る方向となった。同社は既存の事務処理に多くの労力を割いてきたが、生成AIをはじめとするデジタル技術を導入することで作業負担を削減し、創出される余力を営業領域へ振り向ける体制を目指している。投資規模は23〜25年度の約8,000億円を大きく上回り、業務の基盤となるデジタルインフラを抜本的に再構築する狙いがある。
AI活用の具体施策を示す計画
今回の計画には、問い合わせ対応を担う自律型AIエージェントの導入が含まれ、これにより顧客応対の即時性と精度の向上が見込まれる。また、預金や融資に関わる基幹システムの更新も実施され、金融サービス運営の安定性を高める方針だ。さらに、サイバー攻撃に対する防御能力を強化し、リスク管理体制の高度化も並行して進める。これらの取り組みが一体となることで、運営基盤全体の効率化を実現する体制を整える。
海外拠点での開発強化が進展
三井住友FGは8月に、米マイクロソフトの元幹部を招いた新会社をシンガポールに設立し、AI開発の国際拠点として位置づけた。各国の事業拠点でAIを活用した効率化を進める役割を担わせる方針で、すでに40種類以上のAI開発・実証が進行している。営業資料の作成、財務データ収集、経費処理、コールセンター対応など、多岐にわたる業務でAIの導入が想定されている。
個人向けサービス高度化の動き
650万人超が利用する金融サービス「オリーブ」でも、顧客の資産状況に応じたAIによる提案を行う仕組みの導入準備が進んでいる。AIが個々の預金額や利用状況を分析し、運用方針を自動で提示できるようにすることで、金融アドバイスの質と速度が向上するとみられる。こうした取り組みは、金融サービス全体の付加価値向上につながる構造変化を促す。
金融業界全体の競争に及ぶ影響
メガバンク各社がAI導入を急ぐことで、業界内の競争環境は大きく変化しつつある。みずほFGは26〜28年度に最大1,000億円の投資を掲げ、三菱UFJFGはデジタルバンクへのAI活用を検討する。AI導入による24時間対応など新たなサービスの実現が進むなか、各社は新時代の金融インフラの形成を競っている。AIが事業運営の中核となる流れが今後さらに強まる見通しだ。