デジタル課税中止で浮き彫りになった対米依存の構造

市原 陽葵
经过
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経済的報復を恐れたカナダ政府の判断

カナダ政府は、2025年6月30日から施行予定だったデジタルサービス税を直前で中止すると発表した。これは、トランプ米大統領がカナダの課税方針に強い反発を示し、報復関税を示唆したことを受けた対応である。トランプ氏はこの税を「とんでもない政策」と断じ、米国は「経済的にカナダに対して極めて強い力を持つ」と述べていた。

大手IT企業への課税構想が後退

対象となるのは、アマゾン、アップル、グーグル、メタなどアメリカの大手デジタル企業であり、カナダ国内で一定以上の収入を得ている企業に3%の課税を行うものだった。シャンパーニュ財務相は、この課税が2020年に表明されたものであり、「国際合意が成立するまでの暫定措置」であったと説明した。

米加貿易関係の不均衡が政策判断を左右

カナダの対外輸出のうち、およそ76%がアメリカに向けられているが、アメリカの輸出先としてのカナダの比率はわずか17%程度にとどまる。このような対称性に欠けた貿易関係が、カナダ政府の方針転換に影響を与えたと分析されている。

トランプ政権とIT業界の関係が影響か

トランプ政権は、アメリカの主要テック企業との結びつきが強く、それらの利益保護を最優先する姿勢を取っている。デジタルサービス税がもたらす負担額は年に20億米ドル超と見込まれ、トランプ氏はこうした措置に強く反対してきた。

今後の課題は国際的課税ルールの整備

世界では、デジタル経済に対する新たな課税枠組みの必要性が指摘されている。イギリスやフランスをはじめとする各国は独自課税の導入を進めており、今後はOECDやG20などを通じた多国間協議が焦点となる。カナダも「多国間合意を最優先」としており、単独での課税路線は当面見送る方向である。

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