新たな削減目標に国際取引制度を初導入
欧州委員会は7月2日、温室効果ガス排出を2040年までに1990年比で90%削減するという新たな中間目標を公表した。これにより、EUの長期目標である2050年の「実質排出ゼロ」達成に向けて、より具体的かつ高い基準が設定されたことになる。従来の2030年までに55%削減という中間目標を上回る内容で、戦略の軸に国際的な制度を新たに加えた。
排出権購入の上限は3%、開発途上国が対象
この方針では、EU域外の発展途上国から排出権を購入できる制度が導入され、最大で削減目標の3%分を外部取引で充当することが可能となる。対象となるのは主に開発途上国で、温室効果ガス削減の経済的支援と同時に、EU側の削減コスト軽減が見込まれる。制度の実施は2036年から可能となり、特にドイツなどの加盟国の要望が強く反映された内容とされる。
削減実績と見通し、現行目標は順調に推移
EU全体では、すでに1990年比で37%の排出削減を実現しており、2030年までの55%削減目標も想定通りに進行していると報告されている。この結果を踏まえ、より高い2040年目標が実現可能と判断された。現時点での各国の排出状況にばらつきはあるが、EU委員会は「域内全体の進捗は計画通り」としている。
欧州議会と理事会が今後の改正法を審議
新たな中間目標と排出取引制度の導入には、今後欧州議会およびEU理事会の協議が必要となる。欧州委員会はこれらの調整を経て、関連法令の改正を行う方針を示しており、各加盟国との調整も本格化する見通しだ。法案の可決には多数の支持が必要であり、特に制度設計の透明性や環境的正当性が焦点となる。
COP30に向けた欧州の存在感強調が狙い
フォンデアライエン欧州委員長は「われわれの進む道は明確で現実的」と述べ、提案の正当性を強調した。欧州委は11月にブラジルで開催されるCOP30までに制度化を完了させ、国際社会への積極的なアピールを狙っている。EUはこれまでも気候変動対策の先進地域と位置付けられており、今回の提案もその姿勢を内外に示すものといえる。