米関税強化に直面するEU、協議と報復を並行準備

滝本 梨帆
经过
読了目安: 7 分

トランプ政権の高関税方針がEUに打撃

欧州連合(EU)は、トランプ政権が8月1日からEU製品に対して30%の関税を課すと表明したことを受け、緊迫した対応を迫られている。この政策は、米国の貿易赤字削減を掲げる政権の強硬姿勢の一環とされ、特に工業製品や農産物の輸出を行うEU諸国にとって深刻な影響が予想されている。こうした状況下で、EUは合意形成を優先しつつ、同時に報復措置の準備にも着手している。

協議に臨むEU、関税回避に向け動く

23日には、EUのシェフチョビッチ通商担当委員が、米国のラトニック商務長官との協議に出席することが予定されている。この協議では、30%関税の撤回もしくは緩和を目指し、交渉の打開を図る構えだ。交渉後には、その内容がEU加盟国へと報告され、今後の方針に反映されるとみられる。協議による関税回避が第一選択肢であるとの立場は明確であり、EU側の柔軟な対応も求められている。

報復措置は930億ユーロ規模に拡大

EUは、万一交渉が不調に終わった場合に備え、米国からの輸入品に対する制裁関税を検討している。210億ユーロと720億ユーロの対象品目をまとめた930億ユーロ規模の措置案が準備されており、その適用は8月7日以降とする方針が示されている。これは協議による解決を最優先とする姿勢の表れである。

日米合意がEU交渉に影響

7月22日、日本とアメリカが通商交渉の妥結を公表し、日本は米産米の購入を増やすことを決定したが、農産品にかかる関税は現行水準を維持した。EUはこの事例を今後の自らの交渉に影響を及ぼし得る前例として注視しており、合意に盛り込まれた15%の関税率が交渉範囲の下限として意識されている。

今後の展開と欧州の選択肢

今回の関税問題は、EUと米国の通商関係の将来を左右する分水嶺となる可能性がある。EUは交渉に活路を見出しつつも、報復措置による圧力強化を並行して行う二正面戦略を採用しており、今後の協議結果が注目される。関税の実施期限が迫る中、合意形成が間に合うかどうかが最大の焦点となっている。

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