外国人経営ビザ制度改正へ、不正防止と起業促進の両立課題

小野寺 佳乃
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不正在留増加を受けた規制強化が発表

出入国在留管理庁は、外国人による不正在留の増加を背景に「経営・管理ビザ」の要件を厳格化する省令改正案をまとめた。これまでの制度では形式的な会社設立で資格を得る事例が問題視されていた。2024年末時点で約4万1600人がこの資格で在留しており、資本金3000万円以上の企業は全体の4%にとどまっていた。

資本金と雇用を同時要件に変更

改正案では、資本金要件を従来の500万円から3000万円へと大幅に引き上げる。同時に、1人以上の常勤職員雇用を必須条件とした。これにより、資金力と雇用実態の双方が確認できる企業だけが対象となり、不正利用を防ぐ仕組みが強化される。

経営能力と事業計画の審査厳格化

新たに経営者の資質を評価する条件が導入される。「3年以上の経営経験」または「修士相当以上の学位取得」が求められるほか、事業計画は中小企業診断士など専門家による確認が義務化される。これにより、実態のない計画書での申請を抑制する意図が明確になった。

運用面での柔軟対応を示唆

既存の在留者については、資格更新時に新基準が適用される見通しだ。ただし、入管庁は「直ちに基準を満たせないことを理由に更新を拒否することはしない」としており、個別事情に応じた判断を行う考えを示している。硬直的な運用を避けることで、制度の公平性を保つ方針だ。

経済活性化と制度健全化の両立が課題

改正の目的は不正防止にあるが、一方で外国人起業家の参入障壁が高まることへの懸念も根強い。14年の法改正以来、同ビザは新規産業の創出や経済活性化を支えてきた経緯がある。今後は、健全性の確保と外国人起業家支援のバランスをどう図るかが大きな課題となる。

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