米シカゴ派兵をめぐる法廷対立激化

河本 尚真
经过
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治安名目の派兵に州と市が反発

米中西部イリノイ州とシカゴ市は6日、トランプ政権による州兵派遣が合衆国憲法に反するとして、同州連邦地裁に提訴した。政権側は「犯罪多発地域への治安維持」を目的と主張する一方、シカゴ側は「政治的意図による介入」だと反発している。両者の対立は、連邦政府と地方自治体の権限関係を巡る新たな法廷闘争へと発展した。

トランプ大統領が「反乱法」発動に言及

トランプ大統領はホワイトハウスでの会見で、「シカゴを救う必要がある」と述べ、1807年制定の反乱法を「必要があれば発動する」と言及した。この法律は、連邦軍が国内の暴動鎮圧などに出動できる例外規定を定めたものであり、大統領権限の強化を象徴する発言として注目を集めた。政権は、犯罪増加と移民問題を派兵の根拠として挙げている。

シカゴ側「派兵は違法で危険」と主張

イリノイ州とシカゴ市は訴状の中で、トランプ政権の主張する「抗議活動の激化」は誇張だと指摘し、実際は「小規模で平和的」だと反論した。州兵派遣は「トランプ氏による政治的攻撃の一環」であり、「違法かつ危険な行為」だと批判。地方自治の独立を侵害する恐れがあるとして、派兵の即時差し止めを求めている。

他都市にも波及する連邦・州の対立

トランプ政権はこれまでにも、ポートランドやロサンゼルスなど、民主党系首長が治める都市に州兵を派遣してきた。オレゴン州ではすでに連邦地裁が派兵を差し止めており、同様の判断がシカゴでも下される可能性がある。専門家の間では、今回の対立が「連邦主義の限界を試す前例」となるとの見方が強まっている。

政権と地方の緊張、今後の焦点

ホワイトハウスのレビット報道官は、「大統領の法的権限には自信がある」と述べ、判決に不服の場合は上訴する方針を示した。シカゴ派兵問題は、治安対策をめぐる政治的攻防にとどまらず、今後の大統領権限の範囲や地方自治の在り方に影響を与える可能性がある。

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