M&AとIPO急増で収益が市場予想を上回る
米金融大手モルガン・スタンレーが2025年第3四半期(7〜9月期)の決算を発表し、純利益が前年同期比45%増の46億ドルに達した。1株当たり利益(EPS)は2.80ドルと、予想の2.10ドルを大きく上回った。総収入も182億ドルと市場予想の167億ドルを上回り、業績全体が市場予想を超える結果となった。世界的なM&Aと新規株式公開(IPO)の増加が、収益拡大の主要因となった。
投資銀行業務が躍進、アドバイザリー収入も増加
企業の合併・買収の活況を背景に、同社の投資銀行部門の収入は44%増の21億1000万ドルとなった。アドバイザリー業務は25%増の6億8400万ドル、株式引受業務は80%増の6億5200万ドル、債券引受も39%増の7億7200万ドルと、全体的に取引案件の増加が顕著だった。世界的にM&A総額が3兆ドルを突破しており、堅調な米経済と金利低下期待、規制緩和観測が市場を刺激している。
株式トレーディングでゴールドマンを上回る成果
株式トレーディング部門の収入は前年同期比35%増の41億2000万ドルとなり、競合するゴールドマン・サックスの37億4000万ドルを上回った。市場の不安定さが取引活発化を招き、トレーディング全体の収入は62億9000万ドルと、市場予想の55億ドルを大幅に超過した。債券取引も8%増を記録し、同社の市場対応力が強化されていることが示された。
ウェルスマネジメントが安定成長、顧客資産は8.9兆ドルに
主力のウェルスマネジメント部門も堅調で、収入は13%増の82億ドル。新規資金流入額は810億ドルとなり、顧客資産総額は8兆9000億ドルに達した。目標の10兆ドルまであと一歩に迫っている。テッド・ピック最高経営責任者(CEO)は「各事業とも好調に推移した」とコメントしており、資産運用と富裕層管理の両軸で成長を継続している。
コスト増が課題、効率化が次の焦点
業績好調の一方で、コスト面の伸びも顕著だ。人件費は74億4000万ドル、非金利費用は122億ドルに増加し、前年同期比で10%の上昇となった。これは市場予想の6.8%増を上回り、利益率の圧迫要因となっている。同社株は決算発表後に約6%上昇したが、今後の課題はコスト管理と効率化の両立にあるとみられる。