EU、ロシア産ガス輸入停止を正式決定へ

小野寺 佳乃
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制裁第19弾、エネルギー依存脱却を加速

欧州連合(EU)は20日、ルクセンブルクで開かれた外相理事会で、ロシアからの液化天然ガス(LNG)を含むエネルギー輸入を段階的に停止する新たな制裁案を最終調整した。ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、ロシア産ガスの供給を2026年末までに全面的に打ち切る方針で、23日に予定されるEU首脳会議での正式合意が見込まれる。欧州委員会によると、この案はロシアの戦費調達を断ち切ることを目的としており、エネルギー自立に向けた転換点となる。

EU全体の輸入比率、侵攻前の半分以下に

欧州委員会の統計では、ロシア産ガスのEU輸入比率は2022年初頭に約45%だったが、現在は約12%に低下した。各国が再生可能エネルギーやノルウェー産ガスへの切り替えを進めた結果だ。一方で、依然としてロシア産エネルギーに依存する加盟国も存在し、特にハンガリーやスロバキアは代替供給ルートの確保が課題となっている。今回の決定では、こうした内陸国に対し一時的な猶予措置を設ける柔軟性も盛り込まれた。

LNG全面禁止へ、26年から段階的実施

新たな制裁措置では、液化天然ガスの新規契約を2026年1月から禁止し、同年6月には短期契約、2028年1月には長期契約の輸入をすべて終了する。並行して、パイプライン経由のガス輸入も2027年末までに停止する方針がエネルギー相理事会で承認された。欧州委員会は、再生可能エネルギーへの転換とエネルギー供給網の再構築を急ぐことで、計画の実現を目指す。

「影の船団」対策も協議、制裁逃れ封じへ

ロシアがエネルギー制裁を回避するために使用しているとされる「影の船団」への対策も同時に議論された。EU外交安全保障上級代表のヨセップ・ボレル氏は、関連船舶の臨検強化や港湾利用制限の導入を検討していると述べた。制裁逃れに対する取り締まりを強化することで、経済制裁の実効性を高める狙いがある。

ドローン防衛構想と連動、域内安全保障強化

EUでは、近月ロシアの無人機による加盟国領空侵犯が相次いでおり、安全保障面での警戒が高まっている。欧州委員会は2026年中に「欧州ドローン防衛構想」を本格始動させる予定で、制裁政策と並行して防衛体制の整備を急ぐ方針だ。今回のガス輸入停止は単なる経済制裁ではなく、欧州の防衛戦略全体と結びついた措置と位置付けられている。

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