中蘭対立の長期化で欧州車も緊張、量産半導体の滞留が現実味

嶋田 拓磨
经过
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量産用途半導体の供給中断、一般部品でも波及の広さが判明

ネクスペリアの製品は先端品ではないが、自動車や家電に広く搭載される量産用途の半導体である。こうした汎用品の欠配は、部位横断で同時多発的に影響が広がる。サブシステム単位での代替が難しいため、1点の欠落が完成車全体の出荷を止める構造的弱点が露呈した。

欧州製造と中国後工程の分業構造、パッケージング停滞の影響が判明

同社の多くは欧州で製造される一方、中国でパッケージングと検査が行われる。中国側の輸出規制は後工程の滞留を引き起こし、欧州側の完成出荷を細らせる。分業の節目で詰まりが生じるため、前工程の稼働が維持されても完成部材の流通が途絶え、在庫の死蔵化を招きかねない。

閣僚級協議の成果乏しく、解決未到達が各社の在庫戦略に影響

21日の閣僚協議は「解決策なし」に終わった。各社は在庫の安全余裕を再計算し、重要拠点への優先配分や部材の相互代替の検討に移行する。顧客在庫がいつまで持つかは不明で、短期の需給逼迫は工程停止の引き金となる。見通しの不確実性が発注計画にも波及する。

日本と欧州の業界団体が相次ぎ警告を発表、生産継続の要件が焦点

自工会は世界生産への深刻な影響を認識、VDAは生産停止の恐れを示した。いずれも量産用途半導体の連鎖効果を重視し、供給の連続性を最優先課題に据える。工程の地理分散、複線調達、承認済み代替部品の拡充といった“切り替え可能性”が生産継続の要件となる。

通商・安全保障と産業政策の交錯、追加リスク連鎖の影響が懸念

今回の対立は、米国による対中関税引き上げや中国のレアアース輸出規制など、既存の通商リスクに新たな層を重ねた。複合的な規制が同時進行する環境では、単独企業の調整だけでは波及を止めにくい。各国の政策動向と企業の調達戦略の同期が、供給網の安定回復を左右する。

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