原子力協定改定を要請 韓国が安全保障分野で米国と連携強化

市原 陽葵
经过
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米韓首脳会談で安全保障議題が浮上

10月29日に韓国・慶州市で行われた米韓首脳会談では、貿易交渉の最終合意に加え、安全保障分野での新たな協議も焦点となった。韓国の李在明大統領は、米国との既存の原子力協定の改定と、潜水艦用核燃料の供給を求める要請を行った。これは、朝鮮半島周辺の防衛力強化を狙った提案として注目を集めた。

原潜燃料供給を要請 防衛負担軽減を狙う

李大統領は、韓国が通常兵器のみを搭載する原子力潜水艦を自国技術で建造できるよう、米国からの燃料供給を認めるよう求めた。既存のディーゼル潜水艦では北朝鮮や中国の艦艇を長時間追跡できず、監視活動に制限があるためだ。韓国側は、原潜配備によって黄海や日本海での哨戒能力を高め、結果的に米軍の作戦負担を大幅に軽減できると主張した。

原子力協定の制約とその背景

米韓の原子力協定は1970年代に締結され、2015年の改定で2035年まで有効とされている。この協定は韓国に対してウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理を禁止しており、核拡散防止体制の一環と位置づけられている。韓国は研究目的での再処理や低濃縮ウランの生産を限定的に認められているものの、軍事利用につながる高濃縮は依然として制限されている。

米国の反応と協議継続の見通し

トランプ大統領は会談中、原潜用燃料の供給要請に直接的な言及は避けたが、造船や防衛分野での協力拡大に前向きな姿勢を示した。韓国大統領府によると、両国は安全保障面の協議を継続することで一致し、将来的な実務協議の枠組みを設ける方向で検討している。米国が同様の協定を結んでいるのは現在オーストラリアのみであり、韓国がそれに続く形となる可能性がある。

経済合意と安全保障が連動する構図

今回の米韓会談は、経済協定と防衛協力が並行して進展する形となった。韓国の3,500億ドル規模の対米投資は米国造船業の支援にも及び、軍需関連分野との結び付きが強まる。韓国側は、この経済的貢献を通じて安全保障面での信頼強化を図る狙いを明確にしており、アジア太平洋地域における米韓連携の新段階を示すものと受け止められている。

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