トランプ・習会談で「通商関係の再構築」 追加関税を緩和

小野寺 佳乃
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釜山で米中が接触、6年ぶりの直接対話

米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が10月30日、韓国南部・釜山で会談した。両首脳の直接協議は2019年6月の大阪G20以来、6年4カ月ぶり。米中の通商関係が再び冷え込む中、レアアースの輸出制限と追加関税の緩和で歩み寄りが確認された。会談時間は予定を超え、約1時間40分に及んだ。

レアアース輸出制限を1年延期、摩擦激化を回避

中国が10月に発表したレアアース輸出規制強化をめぐり、トランプ氏は当初、11月1日に100%の追加関税を課す構えを見せていた。しかし今回の合意により、中国は規制発動を1年間延長し、米国は制裁関税を20%から10%へ引き下げることで一致した。両国は毎年協議を行い、情勢に応じて措置を再検討する枠組みも設ける。

米中双方が報復関税を1年間停止

中国商務省によると、米国が「相互関税」として課している34%のうち24%の発動を停止していた措置を、さらに1年間延長することで合意した。中国側も対抗措置を同期間停止し、当面の緊張緩和を図る。また、米国は中国の海運・造船分野への制裁を停止し、中国も報復措置を控えることで一致した。

両国首脳、経済協調路線を確認

トランプ氏は「素晴らしい会談だった」と述べ、習氏を「偉大な指導者」と称賛した。両国は米国産大豆の輸入再開など農産物取引の正常化でも合意。さらにトランプ氏は「来年4月に中国を訪問し、その後に習氏を米国へ迎える」と発表した。中国外務省は「相互報復の悪循環を避けるべきだ」として、長期的な経済安定を重視する姿勢を示した。

安全保障分野では協力も限定的

会談では、ロシアの侵攻が続くウクライナ情勢について「解決に向けて協力する」方針で一致した。一方、注目された台湾問題には踏み込まず、議論の対象外とされた。両国はAIやフェンタニル、マネーロンダリング対策などでの協力拡大を模索し、経済を軸とした「新たな米中関係」の構築を目指す姿勢を明確にした。

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