米エネルギー長官「核爆発伴わず」 臨界前実験を説明

市原 陽葵
经过
読了目安: 9 分

トランプ大統領の指示で注目集まる核実験再開の動き

米国のトランプ大統領が、国防総省に「核兵器実験の実施」を指示したと発表したことで、国際社会の注目が集まっている。冷戦終結後、米国は核爆発を伴う実験を1992年以来中止してきた経緯があり、この発言は長らく維持されてきた核実験凍結の方針を揺るがすものとして波紋を広げている。特に、トランプ政権が掲げる「他の核保有国との対等な立場」という表現が、再び軍拡競争を刺激するのではないかとの懸念を呼んでいる。

エネルギー長官が「核爆発ではない」と明確に説明

2日、米エネルギー長官のクリス・ライト氏は、FOXニュースのインタビューで「今回の実験は核爆発を伴うものではない」と明言した。ライト氏によると、トランプ大統領が指示したのは新しい核兵器システムの性能を確認する「臨界前核実験」であり、いわゆる爆発実験とは異なるという。さらに「これはシステムのテストであって、爆発による破壊現象は起こらない。市民がきのこ雲を見るようなこともない」と語り、過去の核実験のような被害の可能性を明確に否定した。

臨界前実験の仕組みと目的が明らかに

ライト長官は、現代の核兵器研究が高性能コンピューターによるシミュレーション技術に大きく依存していると説明した。臨界前実験では、核爆発の連鎖反応を起こさない範囲で核物質の挙動を観測することで、兵器の信頼性を確認できるとされる。つまり、実際に核を爆発させることなく、設計変更や新しいシステムの効果を科学的に検証する手段である。こうした方法は、核爆発禁止を遵守しつつも抑止力の維持を図る手段として、米国が長年採用してきたものである。

米国の核実験履歴と今回の位置付け

米国は1992年以降、爆発を伴う核実験を行っていないが、1997年以降は臨界前実験を計34回実施している。直近ではバイデン政権下の2024年5月にも同様の実験が行われた。今回のトランプ政権による実験指示は、この既存の技術的枠組みを継承する形でありながら、政治的には再開宣言に近い印象を与えている。実験場のあるネバダ州では住民の不安も取り沙汰されたが、ライト氏は「心配する必要はない」と断言している。

核政策を巡る国際的緊張と今後の展望

核爆発を伴わない実験とはいえ、米国の動きは国際的な軍備管理の枠組みに新たな緊張をもたらす可能性がある。ロシアや中国といった核保有国は米国の実験再開方針を注視しており、相互の軍備競争を再燃させる懸念も拭えない。今後、米国がこの臨界前実験をどの程度の頻度で行うのか、また他国がどのように対応するのかが、世界の安全保障環境を左右する重要な焦点となる。

この記事をシェア