米国防長官の韓国訪問 アジア戦略と抑止の両立を強調

河本 尚真
经过
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アジア歴訪の最終地で韓国を訪問

米国のヘグセス国防長官は11月3日午後、アジア歴訪の最終地として韓国に到着した。今回の訪問は、ベトナムやマレーシアなど複数の国を巡る一連の安全保障外交の締めくくりであり、韓国訪問では北朝鮮に近い板門店の共同警備区域(JSA)を安圭伯国防相とともに視察した。両国防相がJSAを訪れるのは2017年以来で、軍事的抑止と外交的対話の両面を意識した行動とみられる。

米韓防衛協力を軸に中国抑止の意図が判明

ヘグセス氏のアジア巡回は、中国の影響拡大を念頭に置いた安全保障再編の一環とされる。ベトナムやマレーシアで防衛協力強化に合意したほか、インドとは10年単位の防衛協定を締結した。韓国では、米韓同盟を地域の要として再確認する狙いがあり、板門店訪問はその象徴的行動と位置づけられている。アジア全体で「抑止のネットワーク」を築く方針がうかがえる。

ソウルでの協議に原潜建造や防衛費が焦点

両氏はソウルに戻り、翌4日に定例の安全保障協議(SCM)に臨む。協議では、韓国の原子力潜水艦建造に関する協力や、防衛費分担のあり方などが主要議題として検討される。米国は同盟国全体に防衛費増加を求めており、韓国との調整は今後の負担構造に大きく影響を及ぼす可能性がある。

北朝鮮の軍事挑発が相次ぐ中での訪問

韓国を訪れる直前、北朝鮮は極超音速ミサイルを含む兵器実験を実施した。こうした挑発的行動が続く中での板門店視察は、軍事境界線上での直接的な抑止姿勢を強調する意味合いが強い。金正恩総書記は一方で、米国との対話再開に含みを残しており、今後の動向が注目される。

地域安全保障の新たな枠組みを模索

ヘグセス長官は、アジア諸国との安全保障連携を拡大する方針を明確にしており、韓国との協力深化はその一環である。今回の訪問で示されたメッセージは、北朝鮮のみならず、中国の軍事的影響力に対抗する広域的戦略の延長線上にある。米韓同盟の役割は今後、単なる二国間関係を超えた地域的抑止体制の中核として位置づけられることになる。

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