原油市場の急変が米国株を直撃
29日の米国金融市場では、原油価格の急上昇が株式相場の大きな下落につながった。ニューヨーク原油先物市場で、WTIの9月渡し価格は前日より6.6%高い1バレル=84.46ドルまで値上がりした。エネルギー価格の上昇が物価や企業経営に及ぼす影響を警戒し、投資家が株式を売る動きを強めた。
ダウ工業株30種平均は前日比1153.18ドル安の5万1594.14ドルで終了した。前日まで続いていた上昇は止まり、4営業日ぶりに値を下げた。1000ドルを超える大幅な下落は、関税政策を巡る混乱が起きた2025年4月以来となった。
中東の緊張で供給不安が拡大
原油価格が急伸した背景には、中東情勢の悪化がある。トランプ米大統領は、イランによる攻撃を受けて報復措置を取る考えを表明した。軍事的な緊張が高まることで、産油地域からの供給に影響が出るとの不安が市場で広がった。
原油供給への懸念は、エネルギー企業だけでなく、輸送や製造など幅広い業種の経営環境に関係する。原材料費や物流費が上昇すれば、企業の利益を圧迫する要因となる。株式市場では中東情勢の悪化が長引いた場合の負担を織り込む売りが増加した。
物価再上昇への不安が売りを誘発
原油相場の上昇により、米国のインフレが再び加速するとの警戒が強まった。エネルギー価格は企業活動や消費生活の多くに影響するため、物価全体を押し上げる可能性が意識された。投資家は、これまでの物価抑制の流れが変化することを懸念した。
インフレ圧力が高まれば、企業の費用負担が増えるだけでなく、個人消費にも影響が及ぶ。金融市場では、物価が上昇する局面で株式の投資価値が低下するとの見方が広がった。こうした警戒感から、建設機械のキャタピラーや金融大手ゴールドマン・サックスなどが売られた。
金利据え置き後も利上げ観測残る
米連邦準備制度理事会は29日の連邦公開市場委員会で、政策金利を現在の水準に維持した。金利変更は見送られたものの、原油高がインフレを押し上げれば、将来的に利上げが必要になるとの見方は消えなかった。金融引き締めが長期化することへの不安が、株式相場の下落を加速させた。
金利上昇は企業の資金調達費用を増やし、特に将来の成長期待を基準に評価されるハイテク株の重荷となる。AI分野の競争激化に対する懸念も重なり、半導体大手エヌビディアなどが値下がりした。金融政策とAI市場の両面から、成長株への慎重な姿勢が強まった。
ハイテク株は6日連続で下落
ハイテク銘柄を中心とするナスダック総合指数は、433.97ポイント安の2万4442.94で取引を終えた。値下がりは6営業日連続となり、AI関連を含む技術株への売りが続いた。原油高や金利上昇への警戒が、ハイテク市場の回復を妨げた。
一方、原油価格の上昇が収益にプラスになるとの見方から、石油大手シェブロンには買いが入った。エネルギー関連の一部を除き、市場では幅広い銘柄が値下がりした。中東情勢を起点とした原油高が、物価、金融政策、企業業績への懸念を連鎖させ、米国株全体を押し下げる結果となった。