米財務長官が11日に日本到着
米国のベッセント財務長官は5月11日午後3時すぎ、羽田空港に到着した。財務長官就任後の訪日は今回で3回目となる。空港で来日の目的を問われた同氏は、「幅広い議題がある。総理大臣と財務大臣に会えることを楽しみにしている」と述べた。
今回の訪日は、今週後半に予定されるトランプ大統領と習近平国家主席の米中首脳会談を前に行われた。ベッセント氏は日本での協議後、13日に韓国を訪れ、中国の何立峰副首相と協議する予定も明らかにしている。日本での会談は、米中協議に向けた外交日程の一部として位置づけられる。
ベッセント氏は11日夜、東京都内のホテルに入り、片山さつき財務相らと夕食を取ったとみられている。12日には高市早苗首相や片山氏との会談が予定されており、経済と安全保障をまたぐ幅広いテーマが扱われる。
為替市場の動向が協議対象に
今回の来日は、日本の通貨当局による大規模な円買い介入が複数日にわたり行われたとみられる直後のタイミングと重なる。外国為替市場では円安ドル高傾向が続いており、日米間で為替の安定をめぐる認識が確認される。
ベッセント氏は、為替介入に批判的な立場を示してきた一方、日銀の利上げについては支持する姿勢を取ってきた。昨年には、日本がインフレ問題を抱えており、日銀の対応が後手に回っている可能性に言及した。さらに、政府が日銀にインフレ抑制へ向けた政策判断の余地を与えるべきだとも述べていた。
1月にスイス・ダボスで行われた日米財務相会談では、日本国債の急落が米国債市場に波及する局面で、ベッセント氏が片山氏に厳しい姿勢を示したとされる。その後、片山氏は市場に冷静な対応を求め、責任ある財政運営を進める考えを表明した。
レアアース供給網で協力拡大へ
ベッセント氏は10日のSNS投稿で、「経済安全保障は国家安全保障そのものだ」と記した。日本での会談では、イラン情勢への対応に加え、中国が大きなシェアを持つレアアースをめぐる日米の連携強化も議題となる。
サプライチェーンの強靱化は、米国と日本の双方にとって重要な課題となっている。特にレアアースは、先端技術や防衛関連産業に欠かせない資源であり、中国依存の低減は経済安全保障上の主要テーマとなる。米側は日本との協力を通じ、重要物資の調達網を安定させる狙いを持つ。
イラン情勢も協議対象に含まれる。中東情勢の緊張はエネルギー供給や海上輸送に影響を及ぼすため、日本経済にとっても重要な問題である。米国は日本と対応をすり合わせ、国際情勢の変化に備える方針だ。
日本通の長官が政策に関与
ベッセント氏は、長年にわたり日本市場を分析してきた人物として知られる。1990年以降の訪日は今回で54回目とされ、日本経済の変化や金融政策の転換に深い関心を示してきた。ヘッジファンド運用者時代には、円相場や日本の金融政策をめぐる取引でも成果を上げた。
同氏は、かつてジョージ・ソロス氏とともに浜田宏一氏と面会し、後にアベノミクスとして知られる政策の構想に接した。日本の金融緩和や円相場の変化を市場機会として捉え、東京とニューヨークを頻繁に往復していた。
この経歴により、日本側の政策担当者にとって、ベッセント氏は通常の米財務長官とは異なる相手となる。日本の財政、金利、為替、国債市場への理解が深く、協議では具体的な論点に踏み込む可能性が高い。市場関係者も、同氏の発言を重視している。
日米協議が市場の焦点に
日本では、財政政策と金融政策の方向性をめぐり、市場の関心が高まっている。高市政権は積極的な財政政策を志向しており、消費税減税の検討も投資家の注目点となっている。一方、日本国債利回りは上昇傾向にあり、海外市場への影響も意識されている。
米国側にとっても、日本の動きは無視できない。日本の金利上昇により、米国債を含む海外資産への資金流入が鈍る可能性がある。さらに、為替介入の資金調達で米国債売却が行われる場合、米国債利回りに影響する可能性がある。
ベッセント氏の訪日は、日米同盟の経済面での重要性を示すと同時に、日本の政策運営が国際金融市場と密接に結びついている現状を浮き彫りにした。12日の首脳・財務相会談は、為替、財政、資源、安全保障を横断する協議として注目される。