黒字化見通しでも慎重姿勢を維持
日産自動車は5月13日、2027年3月期の通期業績予想を公表し、最終損益が200億円の黒字に転じる見通しを示した。前期は再建策に伴う費用負担が響き、最終損益は5330億円の赤字となった。今期は構造改革費用が大きく減少することで、収益の改善を見込んでいる。
ただし、配当については3年連続で無配を続ける方針を示した。黒字化を見込む一方で、販売低迷からの回復、米関税の影響、中東情勢に伴う物流混乱など、収益を圧迫する要因が残る。業績の改善を株主還元に直ちにつなげる段階には至っていないとの姿勢がうかがえる。
前期決算は売上減と最終赤字を計上
2026年3月期のグループ全体の売上高は、前の年度より4.9%減の12兆78億円だった。営業損益は580億円の黒字となったが、前年度比では16.9%減だった。米国の関税措置により営業利益は2860億円押し下げられた。
それでも、想定より円安が進んだことなどが下支えとなり、本業では黒字を維持した。一方、最終損益は構造改革費用やEV関連の減損を反映し、巨額の赤字となった。特別損失には、構造改革と電気自動車関連の減損として2401億円が計上された。
生産体制の縮小で固定費削減進む
日産は経営再建策として、生産体制の見直しを急いできた。世界の生産拠点を17から10に減らす計画を進め、今期中に対象7拠点のうち6拠点の統廃合を終える予定だ。固定費を下げ、需要に見合った生産体制へ移行する狙いがある。
再編後の生産能力は、中国を除いて250万台を前提とする。工場稼働率は世界平均で約80%を想定している。これにより、過剰な設備負担を抑えながら、収益性の改善を図る。
米国や中国で販売戦略を見直し
今期の世界販売台数は、前年比4.7%増の330万台を見込む。日本、北米、欧州、中国で販売の増加を計画しており、新型車の投入などで低迷した販売の立て直しを進める。販売回復は営業利益2000億円の達成に直結する重要な要素となる。
イバン・エスピノーサ社長は、米国で収益性の低い法人向け大口販売への依存を減らし、個人向け販売を重視していると述べた。日本では広告宣伝や販売促進の強化により、販売店への集客が回復しつつあると説明した。中国では顧客層を絞った販売戦略を進め、日産車の市場での位置づけを明確にしている。
外部環境への対応力が業績左右
今期の営業利益見通しには、米国関税による約2500億円の影響が織り込まれている。さらに中東情勢に伴う物流の混乱や原材料高により、上期に150億円の営業減益要因を想定している。影響台数は約1万9000台とした。
日産は代替調達や輸送ルートの変更、中東向け車両の仕向け地見直しなどで対応を進める。自動車事業の手元資金と現金同等物は2兆2000億円で、販売金融会社への貸付金を含めた流動性は3兆6000億円を確保した。資金面の備えを維持しながら、販売台数の回復と構造改革の効果を業績に結びつけることが、今期の中心課題となる。