北朝鮮が11カ国のIT労働者対策文書に反発、暗号資産窃取被害も背景に各国がサイバー監視と対抗措置を一段と強化へ

嶋田 拓磨
经过

北朝鮮が共同文書を政治的非難と批判

北朝鮮外務省は8月4日、日本や米国など11カ国が北朝鮮のIT要員を巡って公表した文書を非難した。外務省報道官は国営の朝鮮中央通信を通じ、北朝鮮の印象を悪化させることを狙った政治的な批判だと主張した。各国が示した活動実態や資金の用途に関する指摘も否定した。

報道官は、米国と関係国がサイバー分野の問題を政治的に利用し、他国を非難して圧力をかけようとしていると反発した。こうした動きを認めないとの立場を強調し、国際社会による監視強化をけん制した。北朝鮮側は、11カ国による発表を事実確認のための文書ではなく、敵対的な政策の一部と位置付けている。

日米韓などが海外での活動実態を公表

11カ国の関係機関は7月31日、北朝鮮出身のIT技術者が身分を偽り、国外の企業から仕事を得ているとする資料を共同発表した。参加国には日本、米国、韓国のほか、英国、フランス、ドイツなどが含まれる。各国は国連による対北朝鮮制裁の履行状況を確認する多国間制裁監視チームを構成している。

発表では、北朝鮮関係者が別の国の市民を装い、企業と雇用契約や業務委託契約を結ぶ手法が示された。仕事の報酬を受け取るだけでなく、契約先の情報を不正に取得するケースもあるという。11カ国は、企業活動の中に入り込む形で収入とデータを確保しているとして、幅広い組織に注意を促した。

収益が核・ミサイル計画を支援と分析

共同資料は、IT関連業務から得た収入が北朝鮮の核兵器や弾道ミサイルの計画に充てられていると指摘した。海外の企業が支払った報酬が北朝鮮側へ渡れば、国際制裁を迂回した資金調達につながる。通常の人材採用や外部委託に見える取引であるため、発注側が関与に気付かない危険もある。

北朝鮮の資金獲得手段は、商品や金融取引を通じたものに限られない。遠隔勤務が普及し、国境を越えてシステム開発などを請け負える環境が、身元を隠した活動に利用されていると各国はみている。このため、オンライン上の契約についても制裁措置との関係を確認する必要性が高まった。

暗号資産900億円超の窃取被害も報告

北朝鮮を巡るサイバー活動では、暗号資産の窃取も各国の懸念材料となっている。6月に日米韓が開いた作業部会では、北朝鮮によって盗まれた暗号資産の被害が、日本円に換算して900億円を超えると報告された。IT技術者による収益確保と合わせ、デジタル空間が資金調達の場になっているとの警戒が広がる。

暗号資産は国境を越えて移転できるため、盗まれた資産の追跡や回収には各国間の連携が必要となる。企業への潜入や情報取得が確認されれば、金銭的な被害だけでなく、システムや顧客データの安全にも影響する。関係国は、複数の手法を組み合わせた活動への対応を進める方針だ。

各国と企業に包括的な防止策求める

11カ国は、すべての国や企業などに対し、契約相手の確認を強化するよう呼びかけた。身分情報、職歴、接続場所などを慎重に調べ、申告された人物と実際の作業者が一致しているかを確認することが求められる。業務を開始した後も、不審な接続や情報へのアクセスがないかを継続的に調べる対応が重要となる。

北朝鮮関係者と取引して報酬を支払えば、契約した企業側に法的責任が生じる場合もある。今回の発表は、政府による監視だけではなく、民間事業者の確認体制を資金流入防止の一部に組み込む内容となった。北朝鮮が反発を続ける中、各国はサイバー空間での活動把握と企業への注意喚起をさらに進める。

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