APEC貿易相会合閉幕で供給網協力と日中接触に注目

小野寺 佳乃

供給網維持を軸に共同声明を採択

APEC貿易相会合は5月23日、中国東部の江蘇省蘇州で2日間の日程を終えた。日本、米国、中国、ロシアなど21の国と地域が参加し、貿易や投資をめぐる課題について協議した。会合の成果として、エネルギーなど重要物資の安定供給に向けた協力を確認する共同声明を採択した。

声明では、緊迫する中東情勢を念頭に、強じんなサプライチェーンを維持する必要性が示された。物流ルートを開かれた状態に保つことも共通の利益として位置づけられた。貿易回廊の維持は、エネルギーや物資の流通に直結する課題として扱われた。

透明性確保と貿易秩序の維持を確認

共同声明では、貿易やサプライチェーンに影響を与える可能性のある措置について、透明性を確保する重要性も明記された。輸出制限や管理措置が各国経済に波及する中、参加国・地域は予見可能な貿易環境の必要性を確認した。多国間の枠組みを通じ、安定した貿易秩序を維持する姿勢が示された。

議長国を務めた中国の王文涛商務相は、閉幕後の記者会見で共同声明の採択を成果として強調した。王氏は、開放的で予見可能な多国間の貿易秩序や、貿易・投資協力の新たな推進力について意見交換したと説明した。討議は率直で踏み込んだものだったとの認識も示した。

日本は輸出制限是正の必要性を発信

日本からは赤澤亮正経済産業相と堀井巌外務副大臣が出席した。赤澤氏は会合後、エネルギーなどの供給網の強化や、自由で質の高いルールの実現について有意義な議論が行われたと述べた。日本として、原油や石油製品への不当な輸出制限、レアアースなどへの恣意的な輸出管理措置は是正されるべきだと発信したことも明らかにした。

赤澤氏は、こうした措置がサプライチェーンに深刻な影響を及ぼし得るとの認識を示した。発信内容は多くの参加者の間で共有されたという。資源やエネルギーの流通安定は、日本にとっても重要な通商課題となっている。

AI貿易の拡大と情報交換を重視

会合では、開発競争が進むAI=人工知能も議題となった。共同声明では、AIが国際貿易のあり方を大きく変える可能性があると位置づけられた。AI関連のモノやサービスの取引拡大に加え、安全性や使いやすさを高めるための情報交換を進める方針が示された。

AIをめぐる国際的な議論は、技術開発だけでなく、貿易や投資のルールにも関わる分野となっている。APECの枠組みでは、デジタル分野の成長を通商政策にどう取り込むかが重要な論点となった。参加国・地域は、AIの活用と管理の両面で協力を進める姿勢を確認した。

日中閣僚接触が関係冷却後の注目点に

今回の会合では、赤澤氏が5月22日夜の夕食会で王商務相と短時間立ち話をしたことも明らかになった。昨年11月の「台湾有事」をめぐる高市早苗首相の国会答弁をきっかけに日中関係は冷え込んでおり、日中閣僚間の接触はその後初めてとみられる。赤澤氏は内容について、外交上のやりとりとして詳細な説明を控えた。

堀井氏も夕食会後の懇談で王氏と立ち話をした。堀井氏は、5月19日に上海で果物ナイフを持った男に襲われ、日本人2人を含む3人が負傷した事件を受け、日本人の安全確保を含む適切な対応を求めた。APEC会合は供給網や貿易秩序をめぐる協議の場であると同時に、冷却した日中関係における閣僚接触の場にもなった。

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