iPhoneを巡る協業関係に生じた転換点
アップルとオープンAIの関係が、生成AI分野での提携から企業秘密を巡る法廷対立へと変化した。アップルは7月10日、オープンAIが自社の機密情報を不正に取得し、独自のAI端末開発に利用しようとしたとして、カリフォルニア州の連邦地方裁判所に提訴した。対象にはオープンAIのほか、アップルから転職して端末開発に参加している元従業員2人などが含まれる。
両社はこれまで、ChatGPTをiPhoneの基本ソフトに組み込む取り組みで協力してきた。アップルは今回の提訴が既存の提携に与える影響について、具体的な見解を示していない。
未発表の製品技術や工程の流出を指摘
アップルは、オープンAIに雇用された関係者が、未発表の技術、製造工程、製品に関する情報を持ち出した証拠があると主張している。訴状では、情報取得が限られた担当者だけによるものではなく、技術スタッフからハードウエア部門の責任者まで、幅広い立場の人物が関係したと指摘した。アップルは、一連の行為を組織的な知的財産の取得と位置付けている。
特に問題視されているのが、アップルからオープンAIへの転職を希望した従業員への対応である。アップルによれば、採用面接の際に製品サンプルを持参するよう指示された例があり、そこから製造技術が取得されたとしている。
元アップル幹部が率いる新事業も焦点
オープンAIは2025年、アップルでiPhoneなどのデザインを手がけた元幹部が率いるスタートアップ企業を買収した。この買収を経て、オープンAIは生成AIを組み込んだ独自端末の開発に乗り出している。アップルの退職者も同事業に加わっており、その中には元幹部や技術関係者が含まれているとされる。
アップルは、新端末の開発過程で自社の技術や工程に関する情報が活用されることを問題視している。訴訟では損害賠償だけでなく、取得したとされる技術の使用を停止するよう求めており、開発そのものへの影響を伴う請求となっている。
オープンAIは企業秘密の取得を明確に否定
オープンAI側は、アップルが示した主張を否定している。同社の広報担当者は、他社が保有する企業秘密には一切関心がないと説明した。その上で、世界中の人々に力を与える新たな技術の開発に注力しているとの立場を示している。
両社の説明は大きく食い違っている。アップルは機密情報が組織的に集められたと主張する一方、オープンAIは他社の技術情報を取得する意図そのものを否定した。今後の司法手続きでは、情報が持ち出された経緯と、実際の端末開発に使われたかが検証されることになる。
提携と競争が並存する両社関係の行方
アップルとオープンAIは、iPhone上のAI機能では提携関係を維持してきた。しかし、オープンAIがハードウエア市場への参入を進めたことで、両社の事業領域は重なり始めた。AIサービスを提供する企業と端末メーカーという従来の役割分担から、同じ端末市場を意識する競争関係へ移行している。
今回の訴訟は、こうした事業環境の変化の中で起きた。アップルは自社の機密情報と知的財産を保護する姿勢を鮮明にし、オープンAIは不正行為を否定した。AI機能で協力する両社が、独自端末の開発を巡って法廷で争う構図となっている。