中部電力浜岡原発データ不正、調査報告が組織風土と経営管理の問題を指摘

浅川 涼花
经过

浜岡原発の審査不正を巡り調査結果を公表

中部電力は9月14日、浜岡原子力発電所3号機と4号機の審査で、地震に関する評価データが不適切に扱われていた問題について、外部専門家による調査結果を公表した。対象となったのは、再稼働に必要な国の審査に提出する地震想定に関する資料や説明で、原子力規制委員会に対して事実と異なる説明が行われていた。

調査委員会は弁護士3人を中心に構成され、中部電力や原子力規制庁の関係者50人余りへの聞き取りを実施した。さらに4000人を超える役職員らを対象にアンケートを行い、問題の発生経緯や組織内の意思決定を検証した。公表された開示版の報告書は約250ページに及ぶ。

ルールより目的を優先する社内判断を問題視

調査報告は、不適切なデータ処理を生んだ要因として、目的の達成を規則の順守より重く見る独自の判断が社内の一部にあったと分析した。安全性そのものに問題がなければ手続き上の違反を許容できるとの認識や、規制当局の要求を技術的に受け入れ難いとする姿勢が確認されたとしている。

加えて、浜岡原発をできるだけ早く再稼働させる必要があるとの意識も背景にあった。こうした考えが重なることで、担当者が不適切な行為を正しいものとして受け止め、組織内で共有する状態につながったとされた。

報告書は、同社で過去に起きた別の不祥事にも似た発想が存在する可能性に言及した。問題を個人の判断だけに限定せず、会社全体の文化や意思決定のあり方を見直す必要性を示した形だ。

再稼働を急ぐ経営姿勢が現場への圧力に

調査では、経営陣が原子力規制委員会による審査の実情を十分に把握できていなかったことも問題の一因とされた。規制側からの指摘など、会社側だけでは短縮できない審査期間がある中で、担当部門には進捗を求める強い要求が続いていた。

2018年には当時社長だった勝野哲氏が審査の遅れに関する不満を示し、2022年には林欣吾社長が迅速な対応を求める趣旨の発言をしていた。報告書は、こうした発言そのものを不当とは認定しなかった一方、担当部署に心理的な負担を与えた可能性があるとした。

経営陣から不正を直接指示した事実は確認されなかった。ただ、再稼働を前提とした意見が中心となり、異なる考えを示す役員が限定的だった点については、ガバナンスの観点から課題があったと整理した。

2度の内部通報生かせず監視機能に課題

報告書では、問題を知らせる内部通報が過去に2回行われていたにもかかわらず、適切な是正につながらなかった経緯も明らかになった。2019年10月には、規制委員会への説明と異なる方法で地震関連データを算出しているとの情報が社内窓口に寄せられていた。

2021年1月にもデータ処理を巡る通報があったが、担当部署による説明を社内窓口側が受け入れ、問題なしと判断した。調査委員会は、担当部署の説明を独立した立場で十分に検証できなかったため、社内の監視や抑制の仕組みが有効に働かなかったと評価した。

これを受け、再発防止策として、専門部署へのコンプライアンス人材の配置、部門横断の人事交流、外部専門家から助言を得る仕組みなどが提案された。反対意見や疑問を組織内で示しやすくする運営も必要とされた。

申請取り下げと経営刷新で信頼回復が焦点

中部電力は調査結果を受け、浜岡原発の再稼働に向けた申請を取り下げる方針を示し、林社長と勝野会長らの辞任も発表した。報告書は原子力規制委員会にも提出され、同社は今後、原因分析と再発防止策を改めてまとめて報告する。

赤沢経済産業相は今回の問題について、原子力の利用には安全確保と地域社会の理解が欠かせないとした上で、中部電力の対応が国民の信用を大きく傷つけたと批判した。特に十分に機能しなかった内部通報制度について、抜本的な改革を求める姿勢を示した。

今後は、データ管理の手続きだけでなく、異論を受け入れる経営体制や内部通報の独立性をどこまで強化できるかが問われる。経営陣の交代と申請取り下げに続き、組織全体の運営をどのように改めるかが信頼回復の中心課題となる。

この記事をシェア