AI技術の進展に伴う金融分野の新たな課題を協議
10月15日にタイのバンコクで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議では、人工知能(AI)の高度化が金融システムにもたらす危険性が議論された。世界各地で不正アクセスの被害が続き、一部の事案ではAI技術の関与も指摘されている。
会議では、新たに登場する高性能AIモデルが不正な目的に利用された場合、金融システムに重大な影響を及ぼすおそれがあるとして、各国の代表者が対応について意見を交わした。
AIは金融分野の安全性に関わる問題として取り上げられた一方、関連設備への投資拡大が金利の動向にも影響している。今回の会議では、AIの悪用に対する備えと、AI産業への資金流入に伴う市場変化という異なる側面が議題となった。
高性能AIモデルの悪用が金融システムの懸念材料に
国際的なサイバーセキュリティー上の問題が、G20で扱われる金融リスクの1つとなった。世界各国では不正アクセスによる被害が相次いでおり、AIが関与したと指摘される事例も出ている。
特に、高度な能力を備えた新しいAIモデルが悪用されることで、金融システムが深刻な危険にさらされる可能性が議論の対象となった。参加国は、こうした技術的な脅威にどのように対処するかについて認識を共有した。
会議では従来の経済政策に関する課題と並び、技術の進歩に伴って生じる新しい金融上の問題が取り上げられた。AIの利用拡大に伴う安全性への対応が、国際的な財務・金融協議の議題に加わった形だ。
米テック企業の社債発行が金利上昇の一因に
AIを巡る議論は、サイバーセキュリティーだけにとどまらなかった。片山さつき財務相は会議後、米国の大手テクノロジー企業による資金調達の動きが、金利上昇に影響していると指摘した。
米国のテクノロジー企業は、AI向けデータセンターの建設を急いでおり、その資金を確保するため巨額の社債を発行している。片山氏は、このような大規模な債券発行も金利を押し上げる要因の1つになっているとの見方を示した。
世界的には財政悪化への懸念を背景に長期金利が上昇しており、債券市場では値動きが大きくなっている。AI関連の設備投資に伴う資金需要も、こうした金融環境の中で注目された。
債券と為替の変動拡大に日本が警戒姿勢を表明
日本から参加した片山財務相と植田和男日銀総裁は、国際金融市場の安定について各国と協議した。会議では、原油価格の高止まりに伴うインフレや、世界的な長期金利の上昇も取り上げられた。
片山氏は閉幕後、債券と外国為替を含む金融市場が不安定になっていると説明した。日本側は市場動向を注意深く監視する必要性を訴え、各国に対して警戒を維持する重要性を強調した。
また、為替相場の行き過ぎた変動が経済に悪影響を与えるとした2021年4月のG20合意について、会議で再確認が行われた。各国の金融環境が変化する中、既存の国際的な合意を改めて共有した。
声明なしで会議終了、G7でも経済とAIの問題を協議
今回の会合では、AI関連の危険性や金融市場の不安定化に加え、中東情勢を背景とする原油高とインフレへの対策も話し合われた。各国が物価上昇に対応するため財政措置を実施している状況も共有された。
一方、G20議長国の米国からはスコット・ベセント財務長官が欠席した。11月3日に実施される中間選挙を控え、米国内の経済問題への対応を優先したためだ。会議は共同声明や議長声明を出さずに閉幕した。
バンコクでは続いてG7財務相・中央銀行総裁会議も開かれる予定で、世界経済の動向とAIがもたらす金融上の危険性について協議が続く見通しとなっている。