横浜地裁が約4300万円の損害賠償請求を棄却
米メタが運営するSNS上の投資広告をきっかけに金銭被害を受けたとして、神奈川県在住の男女6人と1法人が同社に賠償を求めた訴訟で、横浜地方裁判所は10月15日、原告側の請求をすべて退けた。訴訟の対象となったのは、FacebookやInstagramに掲載された著名人を装う広告で、請求総額は約4300万円に上った。
原告側は、詐欺に利用される広告が掲載され続けたことについて、SNSの管理者にも責任があると訴えていた。しかし、高木勝己裁判長は、問題の広告を運営企業が明確な虚偽情報と判断できたとは認められないとした。
今回の判決は、全国各地で進められている同様の裁判のうち、最初に示された司法判断となった。
広告の真偽を確認する義務の成立条件を明示
裁判で中心的な争点となったのは、SNS事業者が掲載広告の内容を事前に調査し、利用者に虚偽情報を届けないよう管理する法的責任を負うかという点だった。
裁判所は、広告の正確性を疑うに足る特別な事情が存在しない場合、プラットフォーム運営者に広告の内容を調査・検証する義務が当然に発生するわけではないと判断した。
この考え方に基づき、メタ側が広告の内容を十分に確認せず掲載したことだけを理由として、損害賠償責任を認めることはできないとした。
原告側は、広告収入を得る事業者には不正な宣伝を防ぐ責任があると主張していたが、裁判所はその主張を採用しなかった。
著名人を利用した投資広告の不正認識が争点に
原告側が問題視した広告には、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長やジャーナリストの池上彰氏など、広く知られる人物の氏名や写真が使われていた。
原告らは2023年4月から11月ごろにかけて、こうした広告を閲覧し、LINEのグループへ移動するよう促された。その後、投資に関する勧誘を受け、現金を詐取されたとしている。
一方、裁判所は、著名人が投資を勧めるという広告の内容について、それ自体が現実には考えられないものとはいえないと指摘した。
広告の見た目や記載内容から、詐欺に利用される虚偽広告であると容易に見分けられる状態だったとは認定しなかった。
広告削除の要請を裏付ける証拠も認められず
原告側は、SNSを悪用した投資詐欺が広がり、本人の許可なく名前や画像を使われた著名人から削除を求める声が上がっていたにもかかわらず、メタが十分な措置を講じなかったと訴えていた。
これに対して裁判所は、問題の広告が虚偽であるとの情報がメタ側に伝えられていたことを確認できないと判断した。
また、広告に登場した人物が運営企業に削除を申し入れていたという点についても、事実として認定するための証拠が不足しているとした。
こうした証拠関係も踏まえ、広告を掲載した運営側に賠償義務があるとする原告側の主張は認められなかった。
原告側は控訴へ、全国の同種訴訟でも判断に注目
判決を受け、原告の弁護団は記者会見を開き、SNS上に多数存在する虚偽広告を事実上許容する内容だとして、裁判所の判断を強く批判した。
弁護団は、今回の判決を不当と位置付け、上級審で改めて責任を追及するため控訴する意向を明らかにした。
メタを相手取った類似の裁判は、横浜のほか、神戸、大阪、千葉、さいたま、名古屋の各地方裁判所でも起こされている。
今回の横浜地裁判決では、広告が虚偽であると認識できたかどうかや、削除要請に関する証拠の有無が重要な判断材料となった。SNS事業者の広告管理責任をめぐる法的な争いは、ほかの裁判所でも続いている。