核軍縮時代の終わりを示唆する最新報告
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)がまとめた年次報告書は、世界の核政策に重大な警告を発している。核弾頭の総数は12,241発と減少傾向にある一方で、即応態勢にある兵器が3割以上を占めるなど、軍縮の実態とは裏腹の現状が明らかとなった。
中国が核戦力を急速に拡大する現状
報告によると、中国は600発の核弾頭を保有しており、年間100発という急速なペースで核兵器を増やしている。他国に比べて突出したこの拡張は、米中の軍事均衡に影響を与えているとされ、米国はその不明瞭な増強方針に強い懸念を抱いている。
AI導入による軍事判断の誤作動に懸念
報告書は、軍事技術におけるAIの導入が意思疎通の錯誤や状況判断の誤認を引き起こす可能性に言及。誤った情報処理が核兵器の使用判断に影響を与える事態も否定できず、従来の人間主導の抑止構造が揺らぐリスクを提示している。
地域対立と誤情報がもたらす危機
カシミール地方でのインド・パキスタン間の武力応酬は、通常戦争が核衝突へと発展する危険を象徴している。報告では、両国が偽情報の拡散も含めてエスカレーションしたことが、重大な教訓であるとされた。また、北朝鮮やイスラエルの核保有状況も引き続き監視対象となっている。
各国の核戦略の立場と対応姿勢
中国外務省は「自衛のための核戦略を一貫して維持しており、先制使用を否定している」と主張。一方、日本はNPT体制の下で核廃絶の道を模索し続ける姿勢を崩していない。今後も核軍縮を巡る国際的な協調と対立の構図が続く見通しとなっている。