製造業再編を象徴する統合計画
日本精工とNTNは2026年5月12日、経営統合に向けて基本合意したと発表した。両社はベアリングを中心に事業を展開する機械部品メーカーであり、国内外で幅広い取引先を持つ。統合が実現すれば、世界市場で首位級のベアリングメーカーが誕生する。
共同持ち株会社の設立は2027年10月を予定している。統合後は持ち株会社の傘下に両社が入る構造となる。最終契約は今後締結され、国内外の競争法に基づく審査や、2027年6月に予定される両社の株主総会での承認を経て実施される。
鋼材高と物流費上昇が圧迫
ベアリングは、回転する軸の摩擦を抑える部品であり、自動車や産業機械、家電など多くの製品に使われる。製造業に欠かせない基幹部品だが、近年は鋼材をはじめとする材料費の上昇が収益を圧迫している。物流費や人件費の増加も重なり、単独での効率改善には限界が出ている。
両社は統合によって、生産体制や調達網の見直しを進める。NTNの鵜飼英一社長は、部品調達や生産拠点の活用を最適化し、コスト削減を図る考えを示した。日本精工の市井明俊社長も、国際競争力を保つには国内業界の再編が必要だと説明した。
世界シェアで首位企業を上回る規模
2024年のベアリング世界シェアは、日本精工が13.3%、NTNが10.7%だった。両社を単純に合計すると24.0%となり、スウェーデンのSKFが持つ17.7%を上回る。統合は、世界市場での存在感を大きく高める動きとなる。
両社の事業規模も大きい。日本精工の2025年3月期の連結売上高は7966億円、NTNは8255億円だった。ベアリングに加え、自動車部品なども手がけており、統合後は幅広い事業基盤を持つ企業グループとなる。
需要鈍化と価格競争が課題に
主力の取引先である自動車や産業機械の市場は、成長の勢いが弱まっている。経済産業省のデータでは、国内のベアリング生産数量は2025年に23億個となり、3年間で13%減少した。市場規模の拡大に依存した成長戦略は取りにくくなっている。
さらに、中国メーカーの台頭によって価格競争も強まっている。鵜飼社長は、価格下落が進み、十分な利益を確保することが難しくなっているとの認識を示した。統合による規模拡大は、こうした競争環境への対応策でもある。
次世代分野への対応力強化へ
統合後の両社は、既存事業の効率化とともに成長市場に向けた開発を進める。対象にはロボット、ドローン、宇宙などの分野が含まれる。高性能な部品が求められる領域で、製品開発力を高める狙いがある。
今回の統合計画は、製造業が直面するコスト上昇、需要鈍化、国際競争の激化を背景にした動きである。両社は共同持ち株会社の設立に向け、統合比率や詳細な体制を詰める。世界首位級の規模を生かし、事業基盤の強化と新分野への展開を進める構えだ。