日本製紙八代工場、損傷確認ない煙突も撤去へ 地震後の周辺安全を優先し安全対策を拡大

小野寺 佳乃

熊本地震後の八代工場で設備の安全対策を再検討

日本製紙は、7月の熊本地震で被災した熊本県八代市の八代工場について、外観から大きな損傷が見つかっていない煙突1本を撤去する方針を固めた。対象となるのは高さ110メートルの設備で、地震後に残された煙突の安全性や周辺施設への影響を踏まえた判断となる。工場では複数の煙突が被害を受けており、会社は被災していないように見える設備についても今後の扱いを検討してきた。今回の決定によって、直接的な被害の有無だけでなく、構造や立地条件を考慮した対応が進められる。

高さ110メートルの煙突を新たな撤去対象に決定

撤去される煙突は1993年に建設され、強化プラスチックを使用した構造となっている。地震で損傷した別の煙突にも同じ素材が使われており、日本製紙はこうした設備の特徴を判断材料の1つとした。現段階では外側から明確な破損は見つかっていないが、会社は現在の状態だけでなく、将来倒れた場合に生じる影響についても検討した。地震を経た既存設備を個別に確認し、安全確保を優先して必要な措置を取る方針だ。

JR九州の駅や線路への影響を踏まえ撤去を判断

対象の煙突の近くにはJR九州の駅や線路があり、万一倒壊すれば鉄道関連施設まで被害が及ぶおそれがある。日本製紙は周囲の環境を重視し、目立った異常が確認されていない段階でも撤去することが適切だと判断した。八代工場では地震の際に実際に別の煙突が倒れており、残存設備についても工場敷地外への影響を考慮する必要がある。今回の対応では、工場そのものの安全だけでなく、隣接する交通インフラへの危険を抑えることも重視された。

工場の煙突5本中3本が被災し解体中には火災も発生

八代工場には計5本の煙突があり、7月の地震でこのうち3本が被害を受けた。1本は倒壊し、従業員ら9人が死亡したほか、別の2本にも損傷が確認されている。さらに、被害を受けた煙突の1本では、その後の解体作業中に火災が起きた。会社は火災が発生した設備について撤去作業を進める一方、ほかの被災した煙突についても新設した委員会の調査などを踏まえ、取り除く方針を示している。地震による直接的な被害への対応に加え、その後の撤去工程でも安全管理が課題となっている。

残る煙突は条件を見極め調査と安全確保を継続へ

外観上損傷が確認されていないもう1本の煙突については、比較的新しく、今回撤去する設備とは使用されている素材も異なる。このため日本製紙は、現時点ではこの煙突を撤去する考えはないとしている。一方、地震で被害を受けた設備については、撤去と並行して倒壊に至った経緯や原因の検証が進められる。新たに設けられた委員会による調査結果は、安全対策や工場の復旧計画にも反映される予定だ。日本製紙は煙突ごとの状態や条件を確認しながら、八代工場と周辺施設の安全確保に向けた対応を続ける。

この記事をシェア