海外投資家14社が東芝に約217億円の賠償求める
2015年に発覚した東芝の不正会計問題を受け、海外の機関投資家など14社が同社に総額約217億円の損害賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所は4月23日、投資家ごとに異なる判断を示した。
裁判では、東芝の有価証券報告書に事実と異なる内容が記載されたことで株価が下落し、投資家が損失を受けたかどうかが審理された。
東京地裁は、14社のうち13社について賠償請求を認めなかった。一方、残る1社については東芝の責任を認定し、約1785万円の支払いを命じた。
判断を分けたのは、株式をどの名義の口座で保有していたかという点だった。
有価証券報告書の虚偽記載と株価下落を認定
この訴訟の発端となったのは、東芝で2015年に明らかになった組織的な不正会計だった。海外の機関投資家らは、同社が開示した財務情報に問題があり、その影響で株価が下落したと主張した。
投資家側は、不正確な情報が記載された有価証券報告書によって損害が発生したとして、東芝に賠償を求めた。請求総額は約217億円に達した。
東京地裁は、有価証券報告書の純損益に関する記載に虚偽があったことを認め、その行為が不法行為に当たると判断した。
さらに、株価下落に伴う損害の発生も認定した。ただし、虚偽記載によって株価が下がったという事実だけで、すべての原告に賠償請求権が認められたわけではなかった。
他人名義の口座を利用した13社の請求を棄却
裁判で重要な争点となったのは、他人名義の口座を通じて東芝株を保有していた13社に、損害賠償を請求する権利があるかどうかだった。
東京地裁は、これら13社について、株式保有に伴う利益や損失が各社に帰属していたと認めることはできないと判断した。
そのため、13社の賠償請求はいずれも退けられた。判決では、株式の保有に関連する経済的な損益が、請求した投資家自身に属していたかという点が重視された。
東芝の財務情報に虚偽があったことや、株価下落による損害が発生したことを認定しながらも、原告と損害との関係については別に判断した形となった。
自己名義で株式取得した1社には約1785万円の賠償
一方、14社のうち、自社名義の口座で東芝株を取得していた1社については、東京地裁が賠償請求を認めた。
判決は、この投資家に対する東芝の責任を認定し、約1785万円の支払いを命じた。ほかの13社とは異なり、自己名義の口座で株式を取得していた点が判断の違いにつながった。
請求総額が約217億円だったのに対し、判決で認められた賠償額は約1785万円となった。
今回の裁判では、不正な財務情報の開示と株価下落との関係に加え、投資家が損害賠償を求めるために必要な株式保有の実態が審理された。
旧経営陣への賠償訴訟とは異なる法的責任の判断
東芝の不正会計をめぐっては、投資家による請求とは別に、会社自身が旧経営陣5人に計32億円の賠償を求める訴訟も行われていた。
この裁判では、2023年の1審で3人に計2億円の賠償が命じられた。しかし、2審の東京高等裁判所は、問題となった会計処理について有価証券報告書の虚偽記載には当たらず、違法ではないと判断した。
その後、最高裁判所が10月15日までに東芝側の上告を退け、会社側の敗訴が確定した。
投資家による訴訟では、東京地裁が財務情報の虚偽記載を不法行為と認定した一方、旧経営陣への賠償請求では、東京高裁が対象となった会計処理の違法性を否定した。
同じ不正会計問題に関連する裁判でも、審理された責任の対象や争点は異なる。投資家の損害賠償請求では、財務情報の内容に加えて、株式保有による損益の帰属が判決を左右する重要な要素となった。