高性能AIを巡る警戒が拡大
総務省は5月21日、高性能な人工知能の悪用によるサイバー攻撃への備えを強めるため、所管分野の関係者を集めた会合を開いた。対象となったのは、情報通信、放送、郵便、地方行政など、社会基盤に関わる分野である。米アンソロピックの新型AI「クロード・ミュトス」を念頭に置き、攻撃側の能力向上に対応する必要性を確認した。
会合では、AIがサイバー空間の脅威を変化させている現状が共有された。高性能AIは、脆弱性の探索や攻撃手法の高度化に利用されるリスクがある。一方で、防御側もAIを活用し、検知や分析、復旧対応の速度を高めることが求められている。
所管分野の業界団体が会合に出席
会合には、情報通信事業者や自治体関係者など、総務省が所管する分野の代表者が参加した。NTTの島田明社長、KDDIの松田浩路社長、千葉県の熊谷俊人知事らも出席し、重要インフラを担う組織としての対応について意見を交わした。放送や郵便を含む幅広い分野が対象となった点も特徴である。
参加者からは、円滑な情報共有を求める意見が出た。サイバー攻撃は個別企業だけで完結する問題ではなく、関係機関の連携が欠かせない。攻撃の兆候や被害情報を迅速に共有する体制の整備が、被害拡大を防ぐうえで重要な課題となっている。
経営層主導の防御強化を要請
林芳正総務相は会合で、AIが攻撃と防御の双方に大きな影響を与えるとの認識を示した。AIによって脆弱性の発見と修正の競争が加速しており、高性能AIの登場でその流れはさらに強まると述べた。こうした状況を踏まえ、経営層が主導して対策を進めるよう求めた。
総務省は、必要な予算の確保や人員の配置も重要な対応として位置付けている。サイバー防御は技術部門だけの課題ではなく、組織全体の経営判断に関わる分野である。脆弱性への迅速な対応や被害発生時の判断には、責任ある管理体制が必要となる。
重要インフラ15分野を重視
政府は5月18日、高性能AIへの対応策を公表した。この中では、社会経済に深刻な影響を及ぼすおそれがある重要インフラとして15分野を指定し、重点的な対策を求めている。情報通信や政府・行政サービスは、その中でも特に広範な影響を持つ分野に含まれる。
重要インフラが攻撃を受ければ、通信障害や行政サービスの停止など、国民生活に直結する影響が生じる。総務省が自治体や事業者団体を集めた背景には、こうした分野横断的なリスクへの対応がある。政府は、防御側でも高性能AIを活用する方針を示し、官民の取り組みを強める考えである。
官民連携で防御体制強化へ
総務省は今後、サイバーセキュリティーに関する情報収集などを担うICT-ISACと連携し、防御体制の強化を進める。会合では、同団体の松田浩路理事から、関係事業者が情報を共有できる環境づくりに取り組むとの説明があった。業界内の連携を深めることで、攻撃への対応力を高める狙いがある。
高性能AIの普及により、サイバー攻撃と防御の競争は一段と速くなっている。総務省は、所管分野の事業者や自治体に対し、組織的な備えの徹底を促した。政府の対応策を受け、重要インフラを守る官民連携の実効性が問われる段階に入った。