急拡大するAI経済の規模を試算
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は7月14日の講演で、2040年に世界のAI関連市場が7000兆円規模に達するとの予測を明らかにした。同年の世界GDPを3.7京円と見積もり、AIが経済全体のおよそ20%を占める巨大産業になるとした。
AI市場の利益率については、50%近い水準になるとの見方を示した。巨大な設備投資が必要になる一方、AIが生み出す収益によって投資費用を回収できるとの考えを示し、ソフトバンクグループとして関連投資を積極化する姿勢を明確にした。
2040年までにはAI分野を主導する企業の顔ぶれが固まるとも指摘した。研究開発力だけでなく、計算設備、電力、データ、資金を確保できるかが、企業間競争の結果を左右する構図を示した。
年間800兆円に達する基盤投資
AI市場の拡大を支えるためには、データセンターや半導体、通信網などに年間800兆円規模の投資が必要になると孫氏は予測した。AIエージェントの増加に伴い、情報処理に必要な計算能力が急速に膨らむためである。
データセンターの消費電力は、現在の約1.8倍に相当する3テラワット規模まで増えるとの見通しも示した。増加分は年間1テラワットに達するとし、AI産業の成長には発電設備と送電網を含む大規模なエネルギー基盤が不可欠になると説明した。
計算能力への需要は、100兆を超えるAIエージェントや10億体規模の人型ロボットが稼働することで、さらに拡大する。AIが24時間情報を処理し、産業現場で自律的に作業する社会では、電力供給の安定性が経済活動の前提になる。
当面の電源は天然ガスが中心
急増する電力需要に対応するため、当面は天然ガスを利用した火力発電が主要な供給源になると孫氏は述べた。発電量を確保しやすく、AI向けデータセンターを短期間で拡張する際の現実的な電源として位置付けた。
AIインフラは、電力供給が不足すれば十分に稼働できない。データセンターの建設だけを進めても、安定した発電能力や送電設備が伴わなければ、計算資源を継続して利用することは難しいため、エネルギー事業との一体的な整備が求められるとした。
ソフトバンクグループは、東京電力ホールディングスが募集する資本提携先として名乗りを上げている。孫氏の発言は、AI関連事業に加え、その基盤となる電力分野にも関与を広げる意向を示すものとなった。
2040年には核融合発電が主役へ
孫氏は、2040年には天然ガス火力に代わり、核融合発電が主要なエネルギー源になるとの見通しを示した。核融合について、より低価格で環境負荷が小さく、安全性の高い発電方法として実用化が進むとの考えを述べた。
将来のAI向け電源を巡っては、地球上で核融合発電を利用する方法と、宇宙空間で太陽光エネルギーを確保する方法の双方が考えられると説明した。そのうえで、宇宙へ設備を展開しなくても、地上の核融合発電が主要な電力供給手段になるとの判断を示した。
AIエージェントだけでなく、人型ロボットが工場や物流現場で稼働する社会では、情報処理設備と機械の双方が大量の電力を消費する。核融合発電への期待は、AI市場の成長を長期的に支える基盤整備の一部として示された。
AI投資の成果を数値で管理へ
孫氏は企業経営者に対し、AI導入に使った費用と、それによって得られた成果を継続的に測定するよう求めた。AIを導入した事実だけでなく、業務時間の短縮、経費の削減、売り上げの増加などを具体的に確認する必要があるとした。
その評価方法として示したのが「リターン・オン・AI」である。企業がAIに投じた金額に対し、どれほどの生産性向上や収益改善が得られたかを、3年程度の時間軸で計算する考え方となる。
AI市場が7000兆円へ拡大するとの予測は、ソフトウエアやロボットだけでなく、データセンター、発電設備、送電網を含む広範な投資を前提としている。孫氏は、知能を生み出す技術と、それを動かすエネルギーを一体で整備することが、次の成長産業を形成するとの構想を示した。