LNG運搬船再開に向け企業協議が進展
今治造船の檜垣幸人社長は7月23日、東京都内で開いた記者会見で、LNG運搬船の国内建造再開に向けて複数の企業と協議を続けていると説明した。国内では2019年以降、この船種の建造実績が途絶えている。
今治造船は過去にLNG運搬船を手掛けており、再参入に必要な技術的な蓄積を持つ。檜垣氏は具体的な事業計画は固まっていないとしながらも、LNGの輸送に必要な船舶を国内で供給する意義を強調した。政府の方針に沿い、建造能力の復元を前向きに検討する構えだ。
最大の障壁となる造船人材の確保
檜垣氏が再開に向けた最大の問題として挙げたのが、建造現場を支える人材の確保だ。LNG運搬船は、高度な溶接技術や特殊設備の取り扱いが必要な大型船であり、一般的な商船とは異なる技能や経験が求められる。
建造が長期間行われていなかったことで、過去に関連業務を担った技術者の退職や配置転換も進んでいる。1社だけで必要な人数を集め、技能を継承することは容易ではない。このため檜垣氏は、会社ごとの枠にとらわれず、複数の造船会社が人材や技術を持ち寄る必要があるとの考えを示した。
3社連携で生産能力の集約を検討
建造再開の候補として、今治造船、川崎重工業、名村造船所の3社による協力案が検討されている。各社の設備や技術者を活用し、設計から建造までの工程を分担する枠組みが想定される。
複数企業が出資する事業会社を設ける案も視野に入っている。新たな組織を通じて設備投資や人材育成を共同化すれば、個別企業に集中する資金負担を軽減できる。協業の具体的な方法は決まっていないものの、国内の限られた造船資源を集約する方向で検討が進んでいる。
国内需要と供給網の維持を重視
政府は2035年の国内建造量を1800万総トンに増やす目標を示した。これは2024年の実績と比べて約2倍の水準に当たり、国内造船業の生産規模を大きく引き上げる計画となる。
檜垣氏は、まず国内で発生する船舶の更新需要を満たせる規模を確保する必要があると指摘した。国内企業が生産量を減らし続ければ、船舶用部品や機器を供給する企業の事業継続が難しくなり、供給網が分断されるためだ。完成船を造る企業だけでなく、多数の関連メーカーを含めた産業基盤の維持が重要となる。
人材育成と国際協力が再開の焦点
世界のLNG運搬船市場では韓国が約8割のシェアを持ち、中国も建造量を拡大している。国内生産を再開しても、価格や供給能力で海外企業との差を縮めなければ、継続的な受注にはつながらない。
檜垣氏は、韓国側とも供給体制の整備などで連携する必要性に言及した。国内企業同士の協力に加え、海外企業の知見や供給能力を活用することも検討課題となる。2035年以降に年間3~5隻を建造する政府目標を実現するには、技術者の育成、部品供給網の再編、採算性の確保を同時に進める必要がある。