中国市場の販売拡大と現地生産体制の見直しが同時進行
小林製薬は8月6日、中国にある連結孫会社、江蘇小林製薬の全保有株式を現地企業へ譲渡すると発表した。健康被害問題への対応を進める中で、海外事業の運営体制についても見直しを進める。
株式の譲渡先は中国の万全万特製薬で、売却額は公表していない。江蘇小林製薬では、これまで水虫薬やにきび治療薬などの一般用医薬品を生産してきた。
小林製薬は、中国国内に自社工場を保有しなくても、一般用医薬品の販売を拡大できると判断した。生産子会社の譲渡によって、現地事業の経営資源を販売活動へ振り向ける。
主力商品の出荷は堅調も自社工場を持たない体制へ移行
2026年1~6月期の中国事業では、「熱さまシート」や「アンメルツ」の出荷が順調に推移した。中国市場での販売増加は、連結売上高を前年同期比2.5%増の707億円へ押し上げた要因の一つとなった。
販売が伸びる中でも、生産設備を自社で保有し続ける必要性は低下したと判断した。工場を持たない運営形態へ切り替えることで、製造部門の固定的な負担を減らしながら、商品の供給と販売を続ける。
同社は現地の生産会社を手放す一方、中国市場から撤退する方針は示していない。一般用医薬品や日用品の販売を維持し、現地需要の取り込みを継続する構えだ。
紅麹問題の補償と製品回収に伴う費用負担が継続
海外事業の再編を進める一方、小林製薬は紅麹原料を含むサプリメントの健康被害への対応を続けている。健康被害問題は2024年3月に公表され、2026年7月末時点の補償対象者は520人となった。
対象者のうち380人には、慰謝料や医療費の支払いを終えている。残る対象者への補償を含め、健康被害を受けた人への対応が引き続き求められる。
2026年1~6月期には、製品回収に関する損失として6億円を計上した。補償や回収に伴う負担に加え、新研究開発拠点への事業所統合費用も発生し、純利益は前年同期比64.1%減の11億円となった。
原材料調達の正常化を受け今後は販売促進策を再強化
事業環境では、中東情勢の悪化による原材料調達への影響も生じた。価格の上昇や入荷の遅れが発生し、必要な原材料を確保できるか不透明だったため、一部商品の発売が延期された。
同社は中東情勢による影響について、通期の営業利益を20億円押し下げると見積もっている。特に2026年4~6月期は、調達環境の悪化と販促費の増加が重なり、厳しい事業運営となった。
現在は原材料の供給状況が通常に近づいている。供給面の制約が緩和したことを受け、小林製薬は商品の販売促進を強め、売り上げの拡大につなげる考えだ。
事業構造の再編と信頼回復への取り組みを並行して推進
小林製薬は、国内では広告活動を本格的に再開し、中国では生産体制の再編に踏み切った。市場ごとに事業運営を見直しながら、収益基盤を整える取り組みを進めている。
一方、広告費の増加によって営業利益は前年同期比67%減の21億円となった。販売拡大に向けた支出が先行しており、事業再建の成果を利益面へ反映させることが必要となる。
健康被害問題への補償と再発防止を継続しながら、国内外の商品販売を立て直すことが同社の重要課題となる。海外事業の効率化と信頼回復策を同時に進め、減少した利益をどのように回復させるかが注目される。