スペースX「ファルコン9」の上段残骸が月面へ衝突、超大型望遠鏡が数十キロに広がった噴煙と2種類の元素を初めて観測

小野寺 佳乃

ファルコン9上段が月面に高速落下

米宇宙企業スペースXが打ち上げたロケット「ファルコン9」の一部が8月5日、月面に落下した。衝突したのは長さ約12メートル、重さ約4トンの上段部分で、時速約8700キロに達していたとみられる。ロケット部品が計画されないまま月へ落ちた事例は、2022年の中国のロケットに続いて2回目とされる。

落下地点は、月のアインシュタイン・クレーター周辺と特定された。衝突時刻は米東部時間5日午前2時35分ごろで、日本時間では同日午後3時35分ごろに当たる。事前に計算されていた時刻と場所から大きく外れず、観測チームは予定していた区域に望遠鏡を向けていた。

月着陸船を運んだロケットの残骸

ファルコン9は2025年1月15日、日本の宇宙新興企業アイスペースを含む民間企業の月着陸船2機を載せ、米フロリダ州から発射された。第1段は打ち上げ後に地球へ戻ったが、第2段は着陸船を所定の軌道へ送り届けた後も宇宙空間に残った。地球周辺を移動し続けた末、約1年7か月後に月へ到達した。

月や惑星へ向かう探査機の打ち上げでは、ミッション終了後のロケット部品が地球低軌道へ直ちに戻らない場合がある。今回の第2段も制御された状態で月面へ誘導されたものではなかった。観測結果により、その最終的な落下地点と衝突時刻が確認された。

超大型望遠鏡が噴煙を詳細に記録

チリのパラナル天文台に設置された欧州南天天文台の超大型望遠鏡は、衝突によって発生した噴煙を捉えた。粉じんやガスの放出は5~10分間続き、広がりは数十キロ規模に達した。月面への人工物の落下を地上の大型観測施設が追跡し、衝突直後の変化を記録した形となる。

観測には、紫外線と可視光を分析する分光器が使用された。研究チームは光を波長ごとに調べることで、噴煙に含まれる物質の特徴を確認した。衝突の明るさだけでなく、放出された成分まで識別できた点が今回の観測の特徴となった。

ナトリウムとリチウムを分光分析

噴煙からは、ナトリウムとリチウムのスペクトル線が検出された。ナトリウムは月面を覆う砂や土壌に由来し、リチウムはロケットの機体側から放出された可能性が示されている。月面物質と人工物由来の成分を分けて把握する手掛かりが得られた。

観測を率いた米ボストン大学の研究者らは、ロケットに含まれていた化学物質が月面周辺へ拡散した痕跡を調べた。米ロスアラモス国立研究所の専門家も、専用の分光装置によって衝突を検知したと確認している。複数の研究機関による分析で、落下現象の詳細が明らかになった。

NASAが月周回探査機で痕跡確認へ

高速で大型の物体が落下したため、衝突地点には大きなクレーターが形成された可能性がある。米航空宇宙局は、月を周回する探査機を使い、現場の撮影を試みる方針だ。画像が得られれば、衝突前後の地形を比較し、クレーターの位置や規模を確認できる。

今回の出来事は、地上からの望遠鏡観測と月周回機による画像調査を組み合わせる対象となる。噴煙の成分、拡散範囲、衝突地点の地形を照合することで、人工物が月面へ落下した際の現象を詳しく検証できる。今後はNASAによる撮影結果が焦点となる。

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