情報アクセスと利用制限の均衡を明記する案
総務省は6月2日、インターネット上で青少年を守るための規制に関する有識者会議で、報告書案を公表した。案は、未成年のSNS利用について、情報に触れる機会を確保しながら、安全面の課題に対応する必要性を示した。SNS依存や誹謗中傷に加え、生成人工知能を悪用して加害行為につながる事例もあるとして、保護策の強化を求めた。
報告書案は、年齢による全面的な利用禁止ではなく、安心して利用できる環境を整えることを重視した。SNSは社会参加や情報収集の手段にもなっており、利用制限だけでは十分な対応にならない。総務省は、青少年保護と情報アクセスの両立を基本に、事業者や関係主体の対応を促す立場を示した。
自己申告に依存する確認方法の見直しが課題
報告書案で中心的な課題とされたのが、年齢確認のあり方である。多くのSNSでは利用可能年齢を定めている一方、登録時の確認を自己申告に委ねている。実年齢を十分に確認できない仕組みでは、年齢に応じた保護機能や広告制限が適切に働かない可能性がある。
総務省案は、SNS事業者や携帯事業者などに対し、利用開始時の年齢確認をより厳格にする検討を求めた。ただし、具体的な確認手段については、利用者の利便性やプライバシーへの配慮が必要だとした。証明方法の導入だけでなく、過度な個人情報取得を避ける制度設計も論点となる。
サービスごとのリスク評価と対策を要請する案
報告書案は、すべてのSNSに同一の年齢制限を課す対応には踏み込まなかった。SNSごとに機能、利用目的、利用者層が異なるため、単一基準で使用年齢を制限することは望ましくないとした。各事業者が自社サービスの危険性を評価し、それに応じた保護措置を設定する方針である。
この考え方は、事業者の責任を明確にする内容でもある。利用者の年齢、表示される情報、広告、投稿機能などを踏まえ、サービス側が必要な安全策を設計する必要がある。保護措置を初期設定にすることも求められており、利用者が自ら設定を変更しなければ守られない仕組みからの転換が課題となる。
端末購入時の確認と機能強化も対象に追加
報告書案は、SNS事業者以外の関係主体にも対策を求めた。スマートフォンを購入する際、店舗などで年齢確認を徹底することや、端末側に備わるフィルタリング機能を強化することが盛り込まれた。利用開始前の段階から保護策を働かせることで、未成年がリスクの高い環境に入ることを抑える狙いがある。
アプリストアのレーティング制度も重要な論点となった。同じアプリでも、ストアによって対象年齢の区分が異なる場合があり、保護者や利用者にとって判断が難しくなる。報告書案は、どの主体と体制が青少年保護の役割を担うべきか、共通基準の検討を促した。
夏の報告書後に制度整備の議論へ進展する見通し
青少年のネット保護は国際的にも議論が進んでいる。5月29日にパリで開かれたG7デジタル・技術相会合では、実効性ある年齢確認や保護者による管理などを含む7つの共通原則で合意した。海外では、オーストラリアが16歳未満のSNS利用を禁止する法律を施行し、欧州では自己申告に依存しない確認方法が進められている。
林芳正総務相は、デジタル空間における青少年保護は世界共通の課題だと述べ、情報アクセスと利用制限のバランスを取る考えを示した。有識者会議は夏をめどに報告書をまとめる予定である。その後、政府は青少年インターネット環境整備法の改正やガイドライン策定に向け、具体的な対応策の検討を進める。