韓国銀行が3年半ぶりの利上げを決定、物価高とウォン安への警戒から政策金利を年2.75%へ引き上げる新たな局面へ

小野寺 佳乃

物価抑制を優先した金融政策の転換

韓国銀行は7月16日に金融通貨委員会を開き、政策金利を0.25ポイント引き上げ、年2.75%とすることを決めた。金利の引き上げは2023年1月以来となり、3年半にわたって実施されていなかった。景気の下支えを重視してきた従来の運営から、長引く物価上昇への対応を優先する姿勢へ転じた形だ。

韓国銀行は2024年以降、経済の減速に対する警戒を強め、段階的な利下げを進めていた。その後は金利水準を維持し、2026年5月まで8会合連続で据え置いていた。今回の決定により、金融政策は緩和方向から引き締め方向へ明確に切り替わった。

エネルギー高が押し上げる消費者物価

利上げの大きな要因となったのが、中東情勢の混乱を受けたエネルギー価格の上昇だ。原油などの価格上昇は、燃料費や電力費だけでなく、製品の生産費や物流費にも波及する。韓国銀行は、こうした外部環境によって物価上昇率が目標を上回る状態が続くと判断した。

韓国の6月の消費者物価指数は、前年同月に比べて3.2%上昇した。韓国銀行が物価安定の目安としている2%を大きく上回っている。申鉉松総裁も、物価上昇率が相当な期間にわたって目標水準より高い状態で推移するとの認識を示した。

ウォン安が拡大させた輸入費用の負担

通貨ウォンの下落も、韓国国内の物価を押し上げる要素となっている。ウォン相場は対ドルで2008年の金融危機以来となる低い水準にとどまっている。通貨価値が下がれば、ドル建てで輸入する原油や天然ガス、原材料などの購入費用が膨らむ。

輸入価格の上昇は企業の収益を圧迫し、商品やサービスの販売価格に反映される要因となる。エネルギー価格そのものの上昇とウォン安が重なることで、韓国経済には二重のコスト増加圧力が生じていた。利上げには、物価だけでなく通貨の下落に対応する狙いも含まれている。

景気の堅調さが利上げ判断を後押し

韓国銀行は、国内経済が想定以上に底堅く推移している点も強調した。半導体産業を中心に輸出と設備投資が増えており、経済活動を支えている。所得環境の改善に伴い個人消費も回復しているため、金利を引き上げても景気が急速に悪化する危険性は低いと判断した。

一方、需要の回復は物価上昇を強める側面を持つ。輸出拡大や投資増加によって企業活動が活発になり、家計消費も増えれば、商品やサービスの価格には上昇圧力がかかる。申総裁は景気が予想以上の強さを示しているとして、8月に成長率見通しを上方修正する方針にも言及した。

追加利上げは物価や為替を見極め判断

韓国銀行は、今後も利上げ方向の政策を続ける必要があるとの考えを示した。ただし、連続して金利を引き上げるかどうかや、その実施時期については決定していない。次回以降の会合では、物価上昇率、景気の強さ、ウォン相場、不動産市場などを総合的に確認する。

8月の追加利上げについても、申総裁は複数の経済指標を踏まえて判断する姿勢を示した。物価の高止まりが続けば、さらなる引き締めが検討されることになる。一方で、金利上昇が家計や企業の借り入れ負担を増やすため、韓国銀行には物価安定と景気維持を両立させる慎重な政策運営が求められる。

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