フランス発の抗議活動が欧州各国へ広がる事態に
欧州各国で、生活費の上昇や教育環境の改善を求める抗議活動が相次いでいる。フランスで9月中旬から続く学生主体のデモは、幅広い年齢層を巻き込みながら規模を拡大し、イタリア、ベルギー、ポルトガル、アルバニアなどでも同様の不満を背景とした集会や行進が行われている。
10月17日にはフランス全土で大規模な抗議活動が実施され、内務省の発表では参加者が約55万人に達した。一部の参加者が警察と衝突し、公共施設や商業施設が被害を受けるなど、各地で混乱が発生した。
こうした動きは教育政策への反発だけにとどまらず、食料品や住宅など生活に直結する費用の増加に対する抗議へと広がっている。
フランスで放火や略奪が発生し警察官にも多数の負傷者
フランス中部リモージュでは、19世紀に建設された市庁舎が放火され、建物の大部分が焼失した。パリでも一部の参加者が警察に石を投げるなどし、治安部隊が催涙弾や放水を使って対応した。
路上では複数の自動車が燃やされ、警察車両への攻撃も確認された。スポーツ用品店に集団が侵入して商品を持ち去る事件も発生し、抗議活動に伴う破壊行為が各地で問題となっている。
現地の報道では、逮捕・拘束された人数は約2,400人に上り、警察官ら約1,000人が負傷した。マクロン大統領は17日、暴力を伴う行為を非難し、抗議活動に便乗した破壊行為を容認しない立場を示した。
イタリアとベルギーで警察との衝突や車両放火が発生
イタリアでは17日、ミラノやトリノで生活費の負担増加に反対するデモが行われた。ミラノでは翌18日にも混乱が続き、顔を覆った若者らが大聖堂周辺の店舗を襲撃し、ごみ箱に火をつけた。警察は約270人を一時拘束した。
メローニ首相は、抗議する権利と市街地での破壊行為は区別されるべきだと強調した。政府は19日に会合を開き、治安維持に向けた対応を協議する方針を示した。
ベルギーでも政府の支出削減や大学の学費引き上げに反対する動きが続いている。9日にブリュッセルで行われたデモには約3万人が参加し、一部が警察官に石や瓶を投げ、バスに放火した。警察は催涙ガスと放水で対応した。
ポルトガルとアルバニアでも生活費への不満が表面化
ポルトガルの首都リスボンでは17日、数万人が住宅費や生活必需品の価格上昇に抗議して市内を行進した。同国の住宅価格は2017年以降に約2倍となっており、住居の確保が難しい状況が深刻な社会問題となっている。
アルバニアでは13日から教育費の見直しを求める学生らが抗議活動を開始した。その後、政府による観光開発計画への反対運動も合流し、17日と18日には首都ティラナで数千人が集まった。
同国では平均月収が約17万9,000円である一方、ティラナの平均家賃は約12万8,000円に達する。住宅費の負担が重いことに加え、開発政策への反発も抗議活動の背景となっている。
各国政府が治安対策を進める中で抗議活動への対応が焦点
フランスのルコルニュ首相は19日、地方当局に対して、一部地域で同日夜から夜間外出禁止令を発令するよう要請した。政府は抗議活動の継続と暴力行為への対応を迫られている。
イタリアでも政府が治安対策を協議するなど、各国で警備体制の強化が課題となっている。一方、デモの背景には物価や住宅費の上昇という共通の経済問題が存在する。
欧州政治を専門とする鶴岡路人教授は、フランスでは来年の大統領選挙への影響も重要な問題だと指摘した。各国の現政権も、抗議活動が国内に広がる動きを警戒している。生活費への対応と治安の確保が、欧州各国の政治課題となっている。