過去最大規模の概算要求で防衛力強化を加速へ
防衛省が2027年度予算案に向けた概算要求で、約8兆9000億円を求める方向で調整している。要求額はこれまでで最大となる見通しで、現在の防衛力整備計画を踏まえながら装備や運用体制の強化を進める。安全保障を巡る環境が厳しさを増しているとして、防衛力の整備を幅広い分野で進める方針だ。
今回の要求では「新たな戦い方」への対応、事態が長期化した際にも活動を続けるための能力、防衛を支える基盤の3分野を重視する。年末に予定される安全保障関連3文書の改定に向けた政府内の議論も踏まえ、一部の施策は現段階で予算額を確定しない形で盛り込まれる。
AIと無人機を軸に新たな戦い方への対応強化
新たな防衛体制では、AIや無人機などの技術活用が大きな柱となる。陸上、海上、航空の各自衛隊を一体的に指揮する統合作戦司令部には、AIを用いて判断を支えるシステムを整備する。大量の情報を迅速に集め、分析や活用につなげるためのクラウド環境も構築する計画だ。
さらに、複数のAI機能などを連携させる次世代基盤「AIオーケストレーター」の構築も要求内容に含まれる。無人機については、民間で利用される製品や技術を取り入れ、低コストかつ短期間で量産でき、長距離を飛行可能な攻撃用機の開発を進める。技術革新を防衛活動に取り込む姿勢を鮮明にしている。
極超音速ミサイルや近距離対空装備の開発推進
反撃能力に関する装備の開発も進める。計画には、水中から発射する方式の極超音速ミサイルが盛り込まれた。高速で移動する新たな装備の研究開発を進め、防衛能力の向上につなげる。
防空分野では、ミサイルやレーザー、無人機などを組み合わせて対応する近距離向けの対空システムを新たに開発する。複数の手段を組み合わせることで、空からの脅威への対処能力を高める方針だ。こうした装備開発とAIによる情報処理を並行して進め、部隊運用全体の機能向上を図る。
装備品の生産基盤と自衛官の処遇改善も重点に
装備を継続的に確保するため、生産体制そのものにも手を入れる。国が防衛装備品などの製造施設を取得し、実際の生産や施設管理を民間企業へ委託する制度の創設を検討する。必要な装備を安定的に供給できる仕組みを整え、長期的な対応力の確保につなげる。
人員面では、自衛官の給与体系を見直す方針も盛り込まれている。装備だけでなく、それを運用する人材の勤務条件や支援体制を整えることで、防衛力を支える基盤を強化する。部隊の能力向上と、人材・生産体制の整備を一体的に進める構成となっている。
事項要求を含み年末の予算編成で規模拡大へ
今回の概算要求には、具体的な額を示さず今後の調整に委ねる「事項要求」が多数含まれる。政府が年末にかけて安全保障関連3文書の改定について議論するため、その内容を踏まえて必要経費を追加する施策があるためだ。このため、約8兆9000億円という要求額だけでは最終的な防衛関連予算の規模は確定しない。
2027年度予算案の編成では、AIや無人機などを活用した装備・システム整備に加え、長期的な対応能力や生産、人員基盤をどこまで具体化するかが焦点となる。防衛省は複数分野を同時に強化し、新たな安全保障環境に対応する体制整備を進める。