米国債市場に重なる財政負担と金利上昇への懸念
米国では国債の利払い費が膨らみ、2024年から国防費を上回る状況が続いている。2025年の利払いは9700億ドルに達し、2026年は1兆ドルを超える見通しとされる。国家債務は2026年3月時点で31兆2650億ドルとGDPの100.2%に達し、コロナ禍を除けば1946年以来の高水準となった。債務残高の増加に高金利が重なり、借り換えや新規発行に伴う利子負担が重くなっている。財政問題が国債市場の安定性や米国資産への信認と結び付く構図が強まっている。
債務比率上昇で利払い負担の長期化が現実味
議会予算局は、現在の傾向が続けば債務のGDP比が2030年に過去最高を更新し、2036年に120%、2056年には175%へ上昇すると見込む。責任ある連邦予算委員会は、10年債利回りが4.6%台、30年債が5.2%台で推移する場合、利払い費が2036年に2兆5000億ドルまで増えると試算した。税収に占める利払いの割合も2025年の19%から30%へ高まる見通しで、歳出の自由度を狭める要因となる。債務の絶対額だけでなく、金利上昇によって支払いコストが拡大している点が、米財政の大きな課題となっている。
円防衛と米国債売却回避を両立した協調介入
米国と日本は7月31日、急速な円安を受けて協調介入を実施し、米国はユーロを売却して円を購入、日本側は約13兆8000億円を投入した。介入前に1ドル=164円近くまで下落していた円は、8月3日に一時155円台まで上昇した。日本は円買いに必要なドルを確保する際、保有する米国債の売却ではなく、FRBのFIMAレポ・ファシリティを利用した。大量の米国債が市場で売却されれば長期金利がさらに上昇する可能性があるため、国債市場への衝撃を避ける手法が選ばれた形だ。為替安定策と米国債市場の安定維持が同時に意識された対応となった。
軍事支出拡大と高金利が米財政を二重に圧迫
トランプ政権は国防費を2026年の9614億ドルから2027年に1兆5000億ドルへ増やすよう議会に求めている。イランとの戦争に関連する国防費は約375億ドルに達し、武器在庫の補充などを目的に670億ドルの追加予算も要請された。減税と軍事支出の拡大が同時に進む中、債務残高と利払い負担の増加が財政上の課題として強まっている。歴史学者ポール・ケネディ氏が示した「帝国の過剰な拡張」という視点では、国力を超えて軍事・安全保障上の負担を抱えることが長期的な弱体化につながるとされる。利払いが国防費を上回る現状は、その議論と重なる指標の1つとして取り上げられている。
米国の財政持続力を左右する3つの重要焦点
今後の焦点は、AIによる生産性向上、財政規律を回復できる政治力、中国との対立を大規模な戦争に発展させず管理できるかの3点とされる。米国の世界経済に占める比率は2026年も26%程度と見込まれ、中国は2025年に16%台まで低下したとされる。IMFは中国の成長率を2026年4.4%、2030年3.3%、米国はそれぞれ2.3%、1.8%とみており、かつてほど大きな差ではない。米国には相対的な地位低下を遅らせる余地が残る一方、国債利払いと軍事支出の膨張が続けば財政負担は一段と増す。米国債市場の安定と財政の持続性は、今後の経済力を左右する重要な論点となる。